"American Penis Story"、または"Oppen-is-heimer"(クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』)

冒頭のエピグラフ、大抵こういうものって既存の文学作品からの引用が定番かと思うのですが、著者名の記載が無かったんですよね。それってつまり、ノーランが自分で書いた文章ってことなのか?と。 そして、この手の実録物にはほぼ欠かさずある、本編最後に黒…

おもしろかった本2023年

今年は、読めた月と全然読めなかった月の差が激しかった。 前半は、大した量ではないけど、大江健三郎を集中して読んでいた。当然まだ未読作品は残っている。亡くなったからって読み出してどうすんだという気もするが。 そして1冊何かを選ぶなら、やっぱりバ…

2023年によく聴いた音楽

ベストアルバム云々みたいなタイトルがしんどくなったのでやめた。シンプルに。アルバムは、聴いたら良さがわかるR&B、みたいなのが多くて、そういうものに関しては、輪にかけてあまり言うことがない。順位はつけてないけどしいて上位のものを選ぶなら、Samp…

常識では考えられないビートたけしの"ビークー"(北野武『首』)

ビークー、じゃなくて『首』、というタイトルで思いつくのはやっぱり、仕事を辞める時の「クビ」だ。漫才のオチとして「やめさせてもらうわ」というフレーズがあるが、もちろん東京の漫才ではあまり見られない。どっちかというと相手に「やめなさい」と言う…

《映画の冒頭シーンのところで入ってくる人々は「ほんの少しの見逃しですんだ」かもしれないが、すでに着席している側は「大切な大切なファーストシーンの場を乱され」ている》のか?

《映画の冒頭シーンのところで入ってくる人々は「ほんの少しの見逃しですんだ」かもしれないが、すでに着席している側は「大切な大切なファーストシーンの場を乱され」ているのだ。》というツイッターのつぶやきを見て、批判とかではなくあくまでこれをきっ…

仮初に集う(宮﨑駿『君たちはどう生きるか』)

死者と再会することはできる、だがわたし(あなた)が望む姿形、場所でのそれではないし、またそれは一時的でしかないため再び彼らとは別れなければならない、そしてそれがたとえ虚構であったとしても、わたし(あなた)が確かに会ったと思いさえすれば良い…

『受苦の時間の再モンタージュ』/2つのものを1つにすること

過去の自分が為した出来事によって、今の立場や仕事が失われてもよいのか、もっとはっきり言ってしまえば、このいじめ「ごとき」でキャリアを奪われるなんてひどい、割りに合わない、という考えと、このいじめはさすがにひどいから、なにかしら罰則が与えら…

ツイッター雑感

実際に、ではなく比喩として、ツイッターが使えなくなり、使う気も起きなくなったので見る頻度が減った。とはいってもまだ1日目なので明日以降自分の気持ちがどうなるかはわからない。 じゃあ他のもの、って言われてもよくわからない。正しいものにしかベッ…

ペイトン・リード『アントマン&ワスプ:クアントマニア』

https://youtu.be/C64RBMl04bc 評判は悪かったけど普通に楽しめた。みなどれだけのものをMCUに望んでるんですか?やっぱり自分は門外漢なんだなと感じてしまった。多分コミックをちゃんとフォローしてる人からしたら耐えがたいところがあるんだろう、という…

ベン・アフレック『AIR/エア』

顔のクロースアップ同士が過剰なまでに徹底的に繋がり続ける会話劇なんだけど、会話というよりつまりは、これもまた、アメリカ映画の典型の一つでもある、一方がもう一方を説き伏せる「説教」映画である、と言うしかない(「牧師さん」も登場するし)。つま…

おもしろかった本2022

タイトル、去年まで漢字だったけどひらがなに開きました。今年の新刊、ということであれば、断トツで『青空と文字のあいだで』かなぁ。今年の終盤は、小説を書かなければいけなくなって、あまり読めなくなってしまった。 今年、家の近所についに良い書店がで…

The best albums and songs of 2022

今年は順位をつけてみた。年ごとにつけたりつけなかったりは完全に気まぐれ。あらかじめ選んであったアルバムの中からパッとフィーリングで抜き出した。それにしてはちゃんとしてるなと自画自賛したい。 基本的に聴いた頻度が高かったものでしかない。どれも…

井上雄彦『THE FIRST SLAM DUNK』

映画ってそもそも自己と他者、見ているもの(現前するイメージ)とかつて見たもの(過去、記憶)、といった本来区切られていると思われているもの同士が混在して区別がつかなくなるメディアなのでこんなこと言っても詮無いですが、『THE FIRST SLAM DUNK』を…

お金を渡す

路上で道や、駅の場所を聞かれたりして、その流れで、帰るための交通費を貸してくれないか頼まれる、というやつがたまにある。自分は何度か遭遇していて、結構その度に渡している。相手から連絡先を聞かれることがあるが教えたことはないし、連絡先を教えて…

チキンレース

人類がまさか、この期に及んで、マスクをつけるだのつけないだのでもめることになるとは…ってしかし、人類は未だ、マスクをつけるかつけないかでもめる程度の文明しか築いていないということなんでしょうか。そして一応記しておくけど私は反マスクではない(…

『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画─セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』(アーティゾン美術館)

ともかくまず、マティスのやばい絵(『コリウール』)を見て、もの(ここの場合はまず他の展示作品のことだけど、ほんとうはそれだけではない)の見え方を変えられてしまうような、目が改造される感じがすごかった。 離れたところから絵に近づいていくと、あ…

サム・ライミ『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

あまりにもサム・ライミの映画すぎる。寄っていくカメラのスピード感ある動かし方、斜めにかしいだ構図、ディゾルブ、顔の並べ方、フェードイン・アウトの連発、むちゃくちゃ最高なアイリスイン・アウト、音の絞り方と爆音の鳴らし方、ダニー・エルフマンの…

マイケル・ベイ『アンビュランス』

映画にまつわる言葉やイメージは完全に統合されきらない。 とはいえ、スクリーンに向かい合う観客の中で、どうにかまとまろうともがき、そして我々も統合しようと試みるわけだけど、そこでなされるのは、仮設であったり、錯覚であったりするしかない。急拵え…

ジョン・ワッツ『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

"care"、"fix"、"cure"という3つの単語について。 最初にメイおばさんの口から"care"という言葉が放たれて、そのアクチュアルさに思わず惹きつけられてしまう。字幕ではそのまま「ケア」だったはず。しかし、この言葉はこの後使われることはなかったように思…

The best albums and songs of 2021

今回もよく聴いてたものを選んだだけ。順位をつけるのもアレな感じなので順不同。なんか、ヒップホップばっか聴いてるなという印象。でも一番はやっぱLittle Simzかなー。『tick, tick... BOOM! (Soundtrack from the Netflix Film)』 『Shang-Chi and The L…

The Best Movies of 2021

また例によって新作もそんな見れてるわけもなく、ただの記録でしかないわけですけど、まぁ一応考えた。意外と邦画が多いのが自分でも驚いたけど、多分どれも小さく縮こまってないつくりの作品だからよかったんだと思います。偉そうだな。11. 劇団ひとり『浅…

面白かった本2021

伊藤亜紗『どもる体』『記憶する体』『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』 前田拓也『介助現場の社会学 身体障害者の自立生活と介助者のリアリティ』 https://www.seikatsushoin.com/bk/045%2520kaijogenba.html鈴木透『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国…

煙草

自分を嫌煙家とは思っていない理由として、たばこ自体をどこでも吸えなくなればいい、とは思ってない、というのがある。 ただ、例えば、道ですれ違いざまにたばこの煙を浴びたりする時、反射的に怒りがわいている。誰かが言ってるのを見たことがないけど、マ…

芸能人

ミーハーなのとめざといのがあって、芸能人を街で見ることが多い。ただあまり覚えていることができない。でも忘れられない部類のエピソードもある。 たとえば、20年くらい前の表参道で、『ラブストーリー』撮影中のトヨエツと戸田菜穂を見て、前者のデカさ(…

「語りの複数性」(東京都渋谷公園通りギャラリー)

展覧会のタイトルを挙げてはいるものの、他の作品も良かったんだけど(山本高之『悪夢の続き』とか)、ここでは、百瀬文『聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと』について書く。スリリングすぎる作品だった。 耳の聞こえない男性との会話である、という…

劇団ひとり『浅草キッド』

風間杜夫が出演するシーンにカンディンスキーがあるのは一体誰のアイデアなんだろうか。それとも史実の通り?なんだろうか。もしかしたら、「北野武監督」の発案かもしれない。いかにも言いそうじゃないですか。…単なる妄想ですけど。 まぁ、それは置いてお…

フレデリック・ワイズマン『ボストン市庁舎』

たとえば"respect"、それから"immigrant"、そして"community"。 英語を使えない人間として、この約4時間半の映画を見ていくと、次第に特定の単語群が自分の中に残っていくのを感じる(おそらく多用されているということなんだろうけど)。これらの言葉、その…

ローソン・マーシャル・サーバー『セントラル・インテリジェンス』

今作に関しては、ツイッターでも言ったんだけど、完全にこれだった。『セントラル・インテリジェンス』、まさかのローソン・マーシャル・サーバーの『ナイト&デイ』で、しかもジョン・ヒューズ物という…むちゃくちゃですわ pic.twitter.com/CkfEBJIDbi— 庭仕…

「和田誠展」(東京オペラシティ アートギャラリー)

和田誠自体が好きな人は当然行くとして、コマーシャルグラフィックが好き、装丁が好き、映画が好き、ミーハーでテレビ好き、…にどれか一つでも当てはまる人は見に行ったら脳の神経細胞がバチバチに繋がりまくる快感が味わえる。と同時にむちゃくちゃな仕事量…

雑感

かっさーの卒業によってひさしぶりにハロのことをぼーっと考えたら(というか「ひさしぶり」である時点で終わってるわけですが)、今の自分が、ここまでハロと距離を感じている理由はやっぱり嗣永さんのことだなと気づいた。あの時からじわじわと離れていっ…