リドリー・スコット『最後の決闘裁判』

最初、chapter 1の編集があまりに小刻みすぎて、余韻もくそもなく感じ、これはちょっとなぁ…と思ってたら、2に入っていき、尻切れトンボなカットが、繰り返されて積み重ねられ、観客=自分の中に蓄積されていくような感覚を味わい始めると、じわじわと、本作…

小説

小説を書く時の悩みとして、途中で飽きる、書こうとしてることがなかなか出せない、登場人物の描写に入っていくとどこかで行き詰まってしまう、というのがある。 ちゃんとプロットなりあらすじを作ってから書けば、幾分かは解消される問題かなとも思う。でも…

怒り

マスクをつけてないとか、ひとところに集まって話してるとか、営業してる居酒屋に人がパンパンに入って酒飲んでるとか、あとはワクチン打たないとか、そういうことに対するヘイトは自分の中になくて、好きにやったらいいと思うんだけど、そういうことにヘイ…

The best albums and songs of 2020

よく聴いた順に選んで並べました。27. くるり『thaw』 傍目から見たらゆるっと作られたアルバムのようだった(実際は違うんでしょうけど)けど、いやだからこそのクオリティの高さ。 26. Logic『No Pressure』 こんなことあんまり言いたくないけどファースト…

The Best Movies of 2020

今回は、雑に言えば色々あったので、新作と旧作が混ざっている。2020年に見た映画くらいの縛り。あと、ようやくではあるけどちゃんと見始めたのでやたらとNetflixが多くなった、というかほぼそれ。それならいっそ全部Netflixにすればいいという気もしてきた…

面白かった本2020

森山至貴 『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』 荒井裕樹『車椅子の横に立つ人 障害から見つめる「生きにくさ」』 ハイメ・マンリケ『優男たち アレナス、ロルカ、プイグ、そして私』 伊藤亜紗『手の倫理』 フランソワ・トリュフォー『ある映画の物…

ウラジミール・ナボコフ『アーダ』

読み終えた、という言葉を打ち込んで、しかし、本当にそう言えるのか?と疑問に思う。ナボコフの小説はおしなべて全てそうだと言えるけど。 過去を執拗に想起し、執念深く描写することで、甘美で無防備でインモラルで淫らな記憶に淫する。 そして、複数の言…

「平野甲賀と」(BOOK AND SUNS)

はてなブログのアプリがあるのを知ったので、使ってみようと思い、書いてみた。 ギンザグラフイックギャラリーでやった晶文社の装丁の展示のボリュームがすごかったので、それを思い出しながら見た。書き文字自体もかっこいいしかわいいんだけど、その配置と…

三宅唱『呪怨:呪いの家』

女性はなぜホラーにおいて特権的に扱われるのか。女性は子供を産む、つまり、恐怖を、凶々しさを、呪いを次世代に継承することができるから。呪いの「主体」にとって都合の良い存在だから。逆に男は産めないので死んでもよく、彼らは死によって解放される。 …

Best Albums of 2019

こういうベストを一人で作るときは、常に個人的なものと非個人的なもののせめぎあいのなかで選ばざるをえない。 つまり完全に個人的であることはありえない、はずなんだけど今回はかなりそっちよりになった。自分にとっての聴きやすさ、ある種肯定的なもの。…

切実さ

自分がかつて過去に好きになったものが自分を支えるのだとして、そこから自分が変化していって今があるのだとして、でもそのある時期の自分を肯定したい、ということではない。ただすぐに否定できないのも確かだ。それはやはり蓄積された時間のせいだろう。 …

豊かさについて

ここ最近ずっと、自分の意志とは関わりなく見せられているような感覚がある、スマホのカメラで撮った映像は、とりあえず、リッチではないもの、のカテゴリーとなるだろうけど、それで満足している現状は、これが数ある選択肢の中の一つ、数あるバリエーショ…

歌うことと踊ること(歌わないことと踊らないこと)

うろ覚えなので自分で捏造したものであったら申し訳ないのだけれど、ジェームズ・ディーンが、何かのショーだかテレビ番組だかに出演した時、自分は歌が下手だからその代わりに、と言って、歌に合わせてリップシンクしながらダンスをした、というエピソード…

バグってる

ドラッグストアを数店巡って空っぽの棚を見たら「バグってんな」という感想が浮かんだ。スーファミやゲームボーイのソフトで起こるような現象。一度カセットを抜いて差し込み口に息を吹きかけないといけない。 9年前にコンビニのカップ麺が全て売り切れてが…

ヴァージニア・ウルフ『幕間』

ウルフは読者を「ぶっ飛ばす」。いや「すっとばす」と言ってもいいかもしれない。そう感じる時いつも頭には東方仗助の姿が思い浮かぶ。 読者の中にウルフは、風景を、思想を、イメージを小説によって蓄積させる。そして、その積み重なりが爆発する境目がやっ…

カルロス・フエンテス『アルテミオ・クルスの死』

終盤にある、アルテミオの生誕と死を、並行して描くくだりは最初からこういう構成になるだろうなというのはわかりきっていたのでそれをまんをじして…みたいに勿体ぶって登場させられてしまうと、『モレルの発明』を読んだ時と同じ感想になってしまった。 『…

KIRINJI『「あの娘は誰?」とか言わせたい』はチャイルディッシュ・ガンビーノ「This Is America」なのではないか?

タイトルですべて言ってしまってますが……。 open.spotify.com この曲をずっと聴いていて、曲自体のメロディーやリズムに対する歌の距離感、歌詞の詰め込み方に、韻は踏んでないけど、自分なりの定義としてですが、メロディー・リズム・訛り・こぶし・呼吸の…

川崎拓也・平牧和彦『東京喰種 トーキョーグール【S】』

登場人物たちの武器としての肉体=器官(「赫子」)から爆ぜる赤い火花や肉片、戦いの中で飛び散る血飛沫が、終盤のあるカットで、高層ビル群の無数の赤色灯に重なる。 ここにおいて(両者の「きれい」さが画の中で通じ合うことで)、喰種たち自身、そして死…

サイモン・キンバーグ『X-MEN:ダーク・フェニックス』

期待してた通り良いじゃないっすか。タイトで引き締まった仕上がりで、なんだったらブライアン・シンガーの過去作より全然おもしろい。ただ、かなり、というかはちゃめちゃ女性(のキャラクター)に関する描写や展開がひどくて絶句した。おもしろいからこそ…

2019年上半期ベストアルバム&トラック

順不同です。 サカナクション『834.194』 open.spotify.com明らかにシングルコレクションの趣きもありながらそれにとどまらない多様性。 Lucky Daye『Painted』 open.spotify.com恒例の(?)メロウ枠。 Future『SAVE ME』 open.spotify.comソウルフルフュー…

ジョン・ワッツ『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

ヴェネチアでの序盤の戦闘シーンがバスター・キートンみたいで最高!…まぁあれを実際にやってたキートンはすげえって話なんですが(という以下に関係のない感想のようだがあながちそうとも言えない)。 映画を見ることは、始まりからイメージに騙られること…

リドリー・スコット『ゲティ家の身代金』

劇場で見れず、ブルーレイでようやく鑑賞。見終わって、おもしろすぎて放心状態になってしまった。近年のリドリー・スコット作品の中で一番好き。さらに言えば、今年見た映画の中で(とか言っても大した数見てないけど)一番食らった。 異様に細部が艶やかな…

ジョエル・エドガートン『ある少年の告白』

他の俳優よりも、監督本人が演じるキャラクターが登場した瞬間から映画が引き締まるという事態。 映画の中で、秘められること、詳らかに、露にされないことを扱うと、必然的に、それにまつわる言葉や動作といった、ある程度、同じ場に居合わせる人物たちの間…

兼本浩祐『なぜ私は一続きの私であるのか ベルクソン・ドゥルーズ・精神病理』

なぜ私は一続きの私であるのか ベルクソン・ドゥルーズ・精神病理 (講談社選書メチエ) 作者: 兼本浩祐 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/10/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る あるひとつの「もの」(他者、外部、環境)…

ロブ・レターマン『名探偵ピカチュウ』

全き、極めてパーソナルで、ドメスティックで、普遍的でないことが、ポケモンと接する自分の中に潜んでいて、それを除くこと、除いて語ることなどできはしないだろう。 そういった記憶や思いを抜きにすることができない人間としては、今から20年以上前、家の…

ガス・ヴァン・サント『ドント・ウォーリー』

AAとグループセラピーと講演会、(今作では交通事故という)決定的瞬間が除かれること、悪態と冗談と親愛の言葉、…おしなべて全てアメリカ(映画)の(重要な)構成要素である。しかもいきなり序盤に、星条旗を背にした演説シーンがあってびびってしまった。…

アダム・マッケイ『バイス』

ともかく、「一度終わって、もう一度始める」という構造が繰り返されていた。 そして、もう一度やる時は、前とは違い、使われるものはまがい物になってる、ということでもあった(むちゃくちゃな法案の中身は変えずに成立させるため、「規制緩和」である、と…

スパイク・リー『ブラック・クランズマン』

サスペンスの盛り上げ方、アンチクライマックス、明らかにタランティーノの手法、センスが使われている。 最初は「俺の方がもっと上手くやるし、ブラックスプロイテーションとかも俺の方が使うべきだろ!」みたいなことなのか、と思っていたが、これについて…

ティム・バートン『ダンボ』

最初に今作についての情報を知った時、ティム・バートンが実写化すべきディズニーアニメは、自分としては、バートン的モチーフに満ち満ちてるから明らかにピノキオだったんだけど、ただ、あえてダンボにしてるというところに期待してたし、あらためて考えれ…

アンナ・ボーデン、ライアン・フレック『キャプテン・マーベル』

予告を見て、倒れても何度でも立ち上がる主人公の画のつなぎに泣き、まさにこれは「なんでもできる!なんでもなれる!」じゃん、と思っていたら、本編もその通りだった。 電車を使った格闘シーンとカーアクション、のあまりのもったりさに不安になったが、そ…