ダグ・リーマン『バリー・シール/アメリカをはめた男』


ドーナル・グリーソン、ジェシー・プレモンス、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの80年代生まれ癖強い俳優3人が揃い踏みしてて目を疑った。なんつーキャスティングだ。


しかしここまで主演俳優、ましてやトム・クルーズがきちんと撮られないとは。例えばバリーとドーナル演じるシェイファーが初対面するバーのシーン、明かりが当たるのは後者で、トム演じる前者は暗がりにいる。それ以降も髪の毛で顔が隠れたり、横顔だったりと、"ザ・スター"的カットは排除されてるように思える。
と考えると、今作のトム=バリーは「撮られる」人というより「撮る」人なんだよなーと。photographerとして、そして終盤畳み掛けるようにして描かれるmovie directorとしてのバリー・シールが出現するのには虚を突かれてしまったよ。

物が増え、量が増え、人が増え、場所が増え、金が増え、電話が増え、車が増え、飛行機が増え、"アメリカの敵"が増え……とやっぱり(アメリカの)出鱈目さが加速してくると俄然見てるこっちも乗ってくる。使いきれない札束が、まるで呪いのアイテムのように増え続けるというとんでもなさ。
バリーという異形のアメリカンヒーロー、彼の元に仲間が集うシーン、前述のようにカメラを使った観客への"語りかけ"、には無論誰もが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を想起するだろう。
さらに、アメリカ映画には大統領ネタはつきもの、というか(これは暴言ですが)大統領に触れることこそがアメリカ映画たるしるしかもなと。そういう意味で、途中の、ある超有名な"息子"登場にはグッときた(彼もまたパイロット、だったらしい……)。さらに、作中で、トム・クルーズの肉声により放たれる「映画スターを政治家が〜」のセリフ、めちゃくちゃ最高だった。しかもそのセリフがよりによってレーガンっていうね…つまりトム・クルーズ大統領ってことはじゃん(違う)。
それにしても、ケイレブ演じるJBが買った車に南軍旗のステッカーが貼ってあり、ある衝撃な出来事の後バリーが閉じこもる部屋に旗そのものが堂々と飾られているカットがある。これは一体なんなんだろう。同じく南軍の旗が唐突に現れる『ブレア・ウィッチ』、KKKをあからさまに表象させた『夜に生きる』を想起したり。

トム・クルーズ演じる人物は基本的におかしな人・奇人(過去作ではたまたま映画内でそれがポジティブにとらえられてるだけ)なので今作もザ・マミーも違和感なし。そしてこちとら重症患者なので、必須の飛行機墜落(しかも住宅街!)、無重力状態、粉まみれのトム、にいちいち反応してしまうわけで…(『宇宙戦争』!)。さらに、今作のバリーもまた、トム的主人公として作中世界から"退場"する(そして女性へ遺産を残す)のだった…。一貫してますねえ。


(やはり映画は"ツラ"、"面構え"ですね…)
あと、めちゃくちゃカラコレされてて、なんだったらカットごとに違う。
それと一番好きなシーンは、ともかく自動車のアレが最高(多分自分が自動車のアレ好きなんだろうな…リメイク版『ロボコップ』とかもそこかなり印象残ったし)。