ニコライ・アーセル『ダークタワー』


はっきり言って大好き100万点。めちゃくちゃ良かった。
神話のない国アメリカで、病的で狂ってパラノイアックな物語を紡ぎ続け、我々の想像力を豊かにしてくれている偉大なるスティーヴン・キングへ敬意を表し感謝したい、と強く思った。病んで狂った神話が、世界の真実であり、世界を救うという、それ自体がまさに狂っているといえる発想よ。表層的には全く似通ってないけど、この作品を見てる間頭をよぎっていたのはエルロイだったりする。エルロイとキングという、1歳違いの2人の小説家は、共にイルでマッドで仄暗いアメリカの擬似的神話をぶちあげ続けて、その偽物=物語でもって登場人物や読者を絶望させ救済する。
そしてファーストカットで、まさにアメリカの昏さの徴とも言える、一見平穏な住宅地の風景、しかし色味の抑揚はなく、化けの皮一枚剥がせばそこには異形の悪意が潜む(突然けたたましく鳴り響くサイレンは、明らかに敵襲警報の寓意では?)、という画が作られてるのだけでうれしくなる。そして舞台で言えば、廃墟と化した古い一軒家、ボロボロの木の板、は最早キングのイコンですね(しかもその木材が、敵へ重要な情報を伝えてしまうという)。
さらにふと、関係ないんだけど、『マトリックス』はあまりにキングすぎるな…もはやキングの二次創作じゃん、と思った。

しかしあらためてマシュー・マコノヒーないしマコナヘーa.k.a.マコ兄は「面(ツラ)」の俳優だよなあとしみじみしたね。ツラで全部持ち去ってしまう。