サイモン・キンバーグ『X-MEN:ダーク・フェニックス』

期待してた通り良いじゃないっすか。タイトで引き締まった仕上がりで、なんだったらブライアン・シンガーの過去作より全然おもしろい。ただ、かなり、というかはちゃめちゃ女性(のキャラクター)に関する描写や展開がひどくて絶句した。おもしろいからこそ、そのひどさが余計気になるというか。監督のオブセッションなのかと思うくらい。ブライアン・シンガーは少なくとも、映画の中においてはここまでひどく女性を痛めつけることはしなかった、と思う(無視はしてたかもしれんが)。

公開前に見ることのできる本編映像内で、レイヴンが発する、"X-WOMEN"というフレーズを含む、結局男たちは女性(の犠牲)によって救われているだけだ、というチャールズへの抗議が、まるで呪いのように映画を支配し、まるで報いのように女性たちが痛めつけられ、映画の世界から排除されていく。

そして列車のシーンはやっぱり白眉。車両の中を前進する動きと戦闘の進行の連動、列車の上層と下層にそれぞれ対立するキャラクターを配置したりなど、運動と空間を結びつける巧みな演出、そしてそれらの前提を無効化してしまう強大な力としてのジーン。その前のニューヨークのシーンで、エリックが地下から"取り出す"地下鉄の車両ですでに次のシーンのモチーフを予言してるのも良い。一瞬そもそもなんで列車?と思うが、「収容所」へ人を運ぶのは列車しかない、ということなのだろう。

それを言うと、サイモン・キンバーグもブライアン・シンガーユダヤ系であって、そうなるとマシュー・ヴォーンが『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でエリックの幼少時のシーンをあからさまに描出したことの問題性について考えずにはいられないわけだけども。