レオス・カラックスホーリー・モーターズ』見た。

例えば数多の映画が、実際は面白いラブストーリーや、サスペンス、ホラー、であったりするのとは違い、今作は、ほんとうの、面白い映画でしかない。
冒頭の、主人公オスカーの部屋のカット――本当にあんな、空港の滑走路がど正面にある風景が窓から見える部屋があるんだろうか、それともあれは合成か?――から度肝抜かれる。
というか、やばすぎるカット、画を、延々と羅列し挙げていくことしかできない…。カメラワークとかもやばくて、とか、貧弱な表現…。
あの劇場をうろついていた、4足歩行の生き物はなんだったのか?とか、エヴァ・メンデスとメルドのピエタ、とか…。
それから、画質。何といったらいいのか…。例えば、スーツ姿、ビジネスマン風のオスカーが出て来る、白い住宅、が、朝焼けの中そびえたっている、というシーンの、異様さ。正確には描写できないのだけれど、背景と、建物の、映像の上での精密さが異なっている、という感じか…。ピントとかではなくて…。
観客同士が向かいあわされるタイトルロール、の長さ。
音響。ブザー、や、何かの機会の作動音、空気音が常に流れていて、その差が、異なる空間の違いを現わしたりもする。
TOKYO!』のメルドの登場シーンにおいて、『大日本人』を想起した者にとって今作は、その連想の正しさを確信させるようなものだった。かつての恋人(であったのか?)の飛び降り死体を見つけて、唸り声をあげながら、車に突っ込むように走って行って乗り込むところ、あの、笑っていいのかいけないのかわからない演出、そして、終盤の、怒涛のかぶせ!猿の家族から、車の会話(って意味わからんが)!完全にそうだろ…。
リムジン車内の小道具とか、すばらしい。あの照明付きの鏡。
《Who were we?》って、こっちが訊きたいよ、っていう…。それは冗談ですが。演者と演者が入れ替わってしまうのだから、誰も、何者かを表明することも、指し示すこともできやしない。その場その場の正解をなぞることしかできない。その文脈においては、暴力も死も殺人も起こりうるし、変な話「容認」されてしまうだろう。それはまったきフィクションのことなんだろうけど。
しかし、『コズモポリス』の最後とか(非対称について)、『ジャッキー・コーガン』の最後(アメリカはビジネスだ)とかもそうだけど、この映画では、リムジンの「発言」(行為の美しさ)とか、何らかの答えを提示せずにはいられないのか…。
あと、飛び降りとか、マンホールからの出現(これ言うの2回目)は、ワンカットで見せてほしかった。
ま、もうどうせ、こんな作品を総体で書くことなんかできねーんだから、あきらめるか…。見るしかないんだ、こんな映画は。
GOODWARP『SOUND FROM A DINGDONG』買った。