2020-01-01から1年間の記事一覧

ウラジミール・ナボコフ『アーダ』

読み終えた、という言葉を打ち込んで、しかし、本当にそう言えるのか?と疑問に思う。ナボコフの小説はおしなべて全てそうだと言えるけど。 過去を執拗に想起し、執念深く描写することで、甘美で無防備でインモラルで淫らな記憶に淫する。 そして、複数の言…

「平野甲賀と」(BOOK AND SUNS)

はてなブログのアプリがあるのを知ったので、使ってみようと思い、書いてみた。 ギンザグラフイックギャラリーでやった晶文社の装丁の展示のボリュームがすごかったので、それを思い出しながら見た。書き文字自体もかっこいいしかわいいんだけど、その配置と…

三宅唱『呪怨:呪いの家』

女性はなぜホラーにおいて特権的に扱われるのか。女性は子供を産む、つまり、恐怖を、凶々しさを、呪いを次世代に継承することができるから。呪いの「主体」にとって都合の良い存在だから。逆に男は産めないので死んでもよく、彼らは死によって解放される。 …

Best Albums of 2019

こういうベストを一人で作るときは、常に個人的なものと非個人的なもののせめぎあいのなかで選ばざるをえない。 つまり完全に個人的であることはありえない、はずなんだけど今回はかなりそっちよりになった。自分にとっての聴きやすさ、ある種肯定的なもの。…

切実さ

自分がかつて過去に好きになったものが自分を支えるのだとして、そこから自分が変化していって今があるのだとして、でもそのある時期の自分を肯定したい、ということではない。ただすぐに否定できないのも確かだ。それはやはり蓄積された時間のせいだろう。 …

豊かさについて

ここ最近ずっと、自分の意志とは関わりなく見せられているような感覚がある、スマホのカメラで撮った映像は、とりあえず、リッチではないもの、のカテゴリーとなるだろうけど、それで満足している現状は、これが数ある選択肢の中の一つ、数あるバリエーショ…

歌うことと踊ること(歌わないことと踊らないこと)

うろ覚えなので自分で捏造したものであったら申し訳ないのだけれど、ジェームズ・ディーンが、何かのショーだかテレビ番組だかに出演した時、自分は歌が下手だからその代わりに、と言って、歌に合わせてリップシンクしながらダンスをした、というエピソード…

バグってる

ドラッグストアを数店巡って空っぽの棚を見たら「バグってんな」という感想が浮かんだ。スーファミやゲームボーイのソフトで起こるような現象。一度カセットを抜いて差し込み口に息を吹きかけないといけない。 9年前にコンビニのカップ麺が全て売り切れてが…

ヴァージニア・ウルフ『幕間』

ウルフは読者を「ぶっ飛ばす」。いや「すっとばす」と言ってもいいかもしれない。そう感じる時いつも頭には東方仗助の姿が思い浮かぶ。 読者の中にウルフは、風景を、思想を、イメージを小説によって蓄積させる。そして、その積み重なりが爆発する境目がやっ…

カルロス・フエンテス『アルテミオ・クルスの死』

終盤にある、アルテミオの生誕と死を、並行して描くくだりは最初からこういう構成になるだろうなというのはわかりきっていたのでそれをまんをじして…みたいに勿体ぶって登場させられてしまうと、『モレルの発明』を読んだ時と同じ感想になってしまった。 『…