こういうベストを一人で作るときは、常に個人的なものと非個人的なもののせめぎあいのなかで選ばざるをえない。
つまり完全に個人的であることはありえない、はずなんだけど今回はかなりそっちよりになった。自分にとっての聴きやすさ、ある種肯定的なもの。
たががはずれた、と言えるのかもしれない。
12. Tempalay『21世紀より愛をこめて』
音が鳴るタイミングも音色も違和感があり「既聴感」のないシンセとギターとドラムによって発せられる異なるリズムが入り乱れ、うにょうにょとした奇妙さと爛熟した美しさが両立する、いやおそらくこの2つは同じものなのだ。そしてこの歌詞こそが日本語の美しさだろと……。
11. Wiki『OOFIE』
毎年選んでいる変なラップミュージック枠(そんなものはない)。
これは自分の問題だけど、近年ずっと、一聴してオッこれは「変」です、とならないと聴きとおす気がなくなってしまう。変な音が鳴り、変なフロウがあって、フリーキーであり逸脱しているようなラップミュージックでなければヒップホップじゃないね。
しかし何回「変」というんだ。
10. John Legend『A Legendary Christmas』
キャリアのあるアーティストが誰かしら、必ず毎年クリスマスアルバムを出すというスタンダードさこそ、豊かである、と言いたい。
ファンキーでありメロウなオケもアレンジも歌もすべてがリッチ(ラファエル・サディークプロデュース!)。
9. Rex Orange County『Pony』
リッチであること、豊潤であることの、対極としての、貧弱であることのチープさではない。弱弱しくも、我々に優しく親しげに寄り添うものとしてのチープさ。"I'm comin' in Bruce Wayne"……。
8. Beyoncé『HOMECOMING: THE LIVE ALBUM』
ひたすらエンパワーメントする、文字通り「鼓舞」する音楽。ビヨンセのキャリアを総ざらえする(かつ未来へと繋がる)超ボリュームのベスト盤ともいえる。
そしてThe Carters仕事として最良のものと言いたい「Deja Vu」の掛け合い(「掛け合い」って……しかし「掛け合い」としか言いようがない円熟味)、何回聴いても飽きず、最高。このド定番っぷりはもはやサブちゃんの「まつり」のようだ。そして、検索すると携帯で撮った映像出てくるんだけど、観客が全編シンガロングしており、それもまた最高。
7. Common『Let Love』
音が一つ一つ粒だっているオーガニックなサウンドは聴いていてひたすらに気持ちいいというやつ。
成熟しておりかつフレッシュである(というのが両立するのがヒップホップなわけだけど)。そしてポジティヴであれとリスナーを勇気づける力強さがある。
6. 杏沙子『フェルマータ』
こういう作品が生まれる限り日本のポップミュージックは信じられる。アレンジの細部にわたって徹頭徹尾考え抜かれている、ちゃんとしてる(パーカッションの楽しさ!)。
5. 土岐麻子『PASSION BLUE』
トラックのドープさ、バキバキ具合もかっけえし、土岐さんのリリックが切実さと凄みを増してて……心配になってくる
— 庭仕事|青空教室 (@niwashigoto) 2019年10月4日
クールなトラックとソリッドでエッジのきいたリリックによる都市の音楽として、今作は一つの頂点に達しているように思える。ここまでくるのにコンスタントに良作を出し続けている土岐さん(トオミヨウさんも)はすごい。そしてここから先にさらに高みへ登っていくことができるのか、できるのならすごすぎる。
"土岐麻子を良い女だと思っている理由は、彼女が揺らいでいるから。"
— 庭仕事|青空教室 (@niwashigoto) 2019年11月12日
https://twitter.com/niwashigoto/status/1194226602160226304?s=20
https://twitter.com/niwashigoto/status/1194226602160226304?s=20
https://twitter.com/niwashigoto/status/1194226602160226304?s=204. Chance the Rapper『The Big Day』
ともかく祝祭、祝福のアルバム。幸せボースティングするチャンスを止める権利などだれも持っていやしない。どんどんやってくれ。今これはチャンスにしかできない、というかこういうヒップホップは今チャンスしかやってないなーと感じる。オンリーワン。"We can be (Eternal), eternal (Forever and ever)"って感じでこれからもいきたい。
3. Tyler, The Creator『IGOR』
ただひたすらに切ない。今までの悪態ではなくて哀切の響き。"For real, for real this time"と何度口ずさんだろうか。ジャンクでラフ、ではなくてきれいに整えられたアルバム。 https://twitter.com/niwashigoto/status/1136045666038194176?s=20
「EARTHQUAKE」聴いて最初に思い出したのは「Sooner or Later」だったhttps://t.co/Pky80dzHlv
— 庭仕事|青空教室 (@niwashigoto) 2019年6月4日
2. KIRINJI『cherish』
なんで毎回毎回こうもかっこよくてアクチュアルなんだ。そして「踊れすぎる」。全曲グルーヴィーでハネまくってる。
1. Ofifcial髭男dism『Traveler』
ともかく2019年一番繰り返し聴いたアルバム。「Amazing」「Rowan」「最後の恋煩い」とこちらの息の根を止めにかかる曲が3つあるのでその時点で完全に好き。
誤解を恐れず言い切ってしまえば、なにも新しく生産しない、ただの良い音楽として屹立するものとしてのポップミュージックである、と。こういう音楽はかつてあったし、今もある。そしてこれからもまた現れてほしい。
official髭男dism『Traveler』、歌うま大賞です
— 庭仕事|青空教室 (@niwashigoto) 2019年10月9日