The Best Movies of 2021

また例によって新作もそんな見れてるわけもなく、ただの記録でしかないわけですけど、まぁ一応考えた。意外と邦画が多いのが自分でも驚いたけど、多分どれも小さく縮こまってないつくりの作品だからよかったんだと思います。偉そうだな。

11. 劇団ひとり浅草キッド』(2021)
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期待通りの良質さ!

10. 吉田大八『騙し絵の牙』(2021)
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コンゲームであり、探偵物であり、サスペンスであり、マスコミ物であり、銃撃も、逃走劇も、飛び立つ飛行機もあって……最高じゃねえか、というね。グローバルに対するローカルの良さを提示して終わるのもクールでしたねぇ。
そして大泉さんのハリウッド的登場人物が如き飄々としたドライさ(人がいなくなってから感情を爆発させる!)にしびれました。

9. ジェームズ・ガン『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)
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キュートでスイート、メロウでサッド、そしてグロテスク、な映画って感じ。反米的でありながら愛国的でもあるという、これこそアメリカ映画だ、という作品。

8. 前田弘二『まともじゃないのは君も一緒』(2021)
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清原果耶さん演じる女子高生の、言葉と情報量の多さと行動力(スナックでエナドリ飲んでくだをまく!)、そこまでに至ることのできる理由の描写のなさ、が完全にハリウッドのコメディで好感を持った。
あと本作に登場する女性のキャラクターが皆、まともで倫理的なのもよい。ぱっと見、外見だけで判断して、(香住が、観客が)勝手に作り上げた内面が、いい意味で覆っていく。

7. 森淳一『見えない目撃者』(2019)
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ともかく、キャラクターの性格の造形、出来事や登場人物の能力のあり得なさ、短いシーンの美術や人物の言動のリアリティ、全てが「ちょうどいい」映画でしたね〜。ちょろっとしか出てこない渡辺大知くんの名簿屋のシーンとか、スカウトマンのくだりとか、ともかく「ちょうどいい」んですよね。最低限よりちょっといい、くらいの感じなんだよな。めちゃくちゃ言葉にしづらいけど。
途中で、これがマット・マードックだったら…でも吉岡里帆ちゃんだしなあ…と思ってたらラストきっちり締めてくれたんで大満足です。銃で眼をぶち抜くなんて、最高すぎる。
そして田口トモロヲさん演じる木村刑事のあの曰く言い難い感じよ。決してめちゃくちゃ優秀な刑事ってわけでもない、さりとて日本映画によくある足引っ張る系のバカでもない、中庸の感じ。キャリアを積んだ刑事の冷静さが滲み出てて(リアルかどうかは知らんけど)すごくよかった。
あと個人的には、犯人周りの描写が必要最低限なのもよかった。一応本人の語りとかあるんだけどそれも結局ほんとなのかなんなのかよくわからない(よね?)。で、この映画で1番しつこさを感じるのが死体描写っていうね。むちゃくちゃだよ!(褒めてます)
それと、あと高杉真宙くんに襲いかかる黒い車のしつこい動きがもはや『クリスティーン』なの笑ってしまった。つまりこの映画、しつこくするところのバランスがいい。

6. 田中裕太『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(2019)
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画も動きもストーリーも設定もテレビシリーズとの連関も全てが良い(今更見て褒めるのも恥ずかしいですけど…)。

5. パティ・ジェンキンスワンダーウーマン 1984』(2020)
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「欲望(の時代としての80年代)」と「(登場人物たちの、叶うはずはなく、叶ったと思ってもそれはまやかしであって、かつ叶ってはいけない)願望」の、そしてホワイトハウスバトル物(そんなジャンルはない)の映画。

4. クロエ・ジャオ『エターナルズ』(2021)
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伸ばした手によって、相手を殺すことといたわること・愛することを同時に行うこと。もちろんこの「手」は、人類にとっての(科学)技術の喩えでもあるわけだけど……。
しかしまぁ、エターナルズたちのキャラクター造形に完全に心を掴まれてしまった。全然無敵でもないし、完璧でもない、ある決まった生き方しかできない人々(ってそれはつまり我々のことだ)の切なさ。イカリスの涙に、全然同情すべきじゃないんだけど、こっちも泣いてしまった(なぜなら私も彼のような有害な男だから…ということか)。
にしてもテレンス・マリックをこんな風に使うとは!(そしてなんと驚くべきことに、テレンス・マリック作品自体にも逆照射する映画にもなってる…)そして何よりまたしてもドラゴンボールという。いい加減に(とか私がいう義理ないですけど)近年のブロックバスターにおけるドラゴンボールの重要性みたいなものをきちんと検証すべきなんじゃないのと思った。

3. ルーベン・フライシャーゾンビランド:ダブルタップ』(2019)
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「聖地」のないアメリカに作り出された「擬似聖地」、歴史とか宗教とか文化とかでなく、芸能によって、エンターテインメントによって作られた聖地としての「本物」(本物の偽物!)のグレイスランド、ではなくてそれを模倣した虚構(偽物の偽物!)のグレイスランドを、模したモーテル(偽物の偽物の偽物!?)に、「本物」のエルビスの靴があり、そこでそっくりの登場人物同士が出会う、という本物と偽物の多層構造にグッときた。
この本物と偽物、現実と虚構、実物と模倣、については、まさしくアメリカ自体がその二面性によって成り立っている国だ、ということですよね。リンカーンが寝ていないリンカーンベットルームの象徴性よ。
しかもゲーテッドコミュニティと銃の所持についての問題まで描かれる。そして結論は、銃はたくさん無くてもいい、けど1丁くらいはあった方がいい!っていうね。なんつープラグマティックさよ。

2. ジョン・クラシンスキー『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2021)
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冒頭の野球場のシーンでのカットの繋ぎ方の切れ味から、あれっもしかしてこの映画、編集がすごいのでは…?という思いがよぎり、その予感が当たってしまった。正直、やりすぎというか、ここまでやっていいのか?と勝手に問いかけたくなるくらいではあった、でも、2つの鉄橋が繋がる美しさ、光と炎と水が構築するスリルとサスペンス、そして2人の子供、の(あからさますぎる)素晴らしさには何も言えない。
"DAY 1"での聖書を口ずさむ男性の口元を手で塞ぐシーンで、前作同様、またしても「信仰告白」の映画じゃん!となり、しかもその後の「着信音」を使った展開には、おもしろさ、サスペンスの中に完全に個人の主張が含まれており(アンチテクノロジー!)、あの「箱」を出すことでさらにこのモチーフを強調する。しかも後半でこの箱が入れ子状態(しかも「時間制限」をあまりにもあからさまに示して)になってしまうという詰め込み具合。
後半に登場する、靄がうっすらたちこめる闇夜の港町の画を見た時には志向するところがはっきりとしすぎてて笑ってしまった。その後の「不気味」な展開を予見させる画作り!
しかしこの、港町からの後の展開の手際の良さ、見えすいた「段取り」感にも度肝抜かれた。ボート!島!みたいな…まるで地上波テレビ放送するために尺調整してるかのような編集!…ってこれは全然悪口ではなく、ここまで割り切ってバサバサ切って繋げているその姿勢に感動したという意味です。
そして「島」での展開のスピーディーさは、港町での出来事と対比になってるわけですよね。環境によって「他者を受け入れる」際の振る舞いがどれだけ異なってしまうかという。
ラストについてはまさしく前作の続きで、「自警は終わらない」とでもいうか…それってアメリカの自警主義なんじゃないですか!?MAGAに親和性すらあるのでは!?と思ってしまう。もちろんわかっててやってるんでしょうけど。
あと"DAY 1"を描くことによって、なぜアボット一家がある程度のところまで皆生き残ることができたのかを端的に示し、そして障害に関する、かなりセンシティブな価値観(障害を優れた能力とする、的な)を提示してして、そこの是非は問われるべきだとは個人的には思います。

1. デヴィッド・フィンチャー『Mank/ マンク』(2020)
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冒頭の、車が迫り来る音と劇伴が同時に流れているのを聴くだけで異様に高揚してしまいました。
そして、ハリウッドトンチキ偉人(≒悪人)列伝…?かと思いきや"Republicans vs Democrats"、ヒトラーとFDR、そしてアプトン・シンクレア!フィンチャーの気合いを感じた。
正面でも横でもなく、斜めから見ること、斜め方向から車や人がやって来て、去っていくことが描かれていた。斜めにすれば、どこから来てどこへ行くのかを一つの画の中に収めることができるから、ということ……。