ローソン・マーシャル・サーバー『セントラル・インテリジェンス』

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今作に関しては、ツイッターでも言ったんだけど、完全にこれだった。


トム・クルーズ(なお本作には"I'm Scientologist"なんてふざけた台詞も登場します)の陽性の不穏さを思わせる、信頼できないと観客には思えてならないドウェイン・ジョンソンを、なぜか最終的にはいつも信じてしまい、従ってしまうケヴィン・ハート。前者の運転する、あらゆる乗り物によってひたすらに後者が運ばれていくというのも、『ナイト&デイ』を思わせる奇妙さだ。もちろん運ばれる存在はヒロインであって、だからこそ、自分で運転すると事態は悪化するし、最後には『すてきな片想い』オマージュが炸裂し、「ロック様」がお迎えに来てくれるのだった。ちなみに、全く関係ないけど、もう一つ今作にタイトルが登場する作品である『グッドフェローズ』も、ある意味、人を乗り物で運ぶ映画、と言えるかもしれない。それと疑心暗鬼になる人間の話という共通点も……?(ありません)
そして、登場するキャラクターを、完全にリベラルである、とは言えないけど、アメリカ映画的類型から微妙にずらして描いている。『スカイスクレイパー』『なんちゃって家族』と続けて見てこの映画作家の特殊さに確信を持った。ただ、Pornhubとか、ペニスが巨大化するアプリとか、オフィスでポルノを見ちゃうとかの、愚直な下ネタの扱い方があり、それはまぁ、作家性なのかもしれない……。
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本作では、閉鎖された空間において虚実の境が曖昧になる。家の中や運転席はもちろん、パーテーションで仕切られたデスクやオフィスの中の小部屋、そして白眉となるのはカウンセリングルームだろう。最も信頼関係が存在しなければいけない空間において、嘘をついているのが誰かわからない、という状況が発生してしまうというでたらめさ。そしてそんな空間がまさかの告解室と化してしまうというやばさ。強引に心中を告白させられ、言いくるめられる……。
あとはアクション映画としての細部にグッときてしまった。オフィスでの戦闘でコピー機のトナーを撃つなんてすばらしい工夫が見られるし、私の大好きな『2ガンズ』の、逃走時に車を破壊していくやつを見ることもできたので最高でした。