金井美恵子『噂の娘』を読む。

《それから、思い出すのだ。いや、そうではなく、思い出すのではなく、それを虚しく生きてみる。何度でも、何度でも、何度でも。》(p249)

氷イチゴ(の吐瀉物)の繰り返される描写。「小刀」は肥後上だろうな、とぼんやり思う。

《(…)でも、そういう物にも、お手本というのか例文というのか、決った書き方があるのかもしれない、だって、いつどこで読んだのだか映画で見たのだか、はっきり覚えていないけど、なんか、書くことは決ってるような気がする、と言い、(…)》(p275)

ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』上中下巻、ロブ=グリエ『迷路のなかで』、大岡昇平『成城だより(下)』を買う。下巻がアマゾンになかったので先に下巻だけ買う。
埴谷雄高の「いじられ方」(元ヴァレンティノ、とか)、そして、《五歳の茜、ベッドのそばに来て、/「おじいちゃん、そんなに少女マンガ読んでどうするの」/ときかれ、答えに窮す。/「少女マンガ、描くんだ」/と答えて、毛布をひっかぶる。文壇事情を少女マンガ風に物語化した夢を見た。》(p143)というところ読み、買うしかないと思い購入す。

J・J・エイブラムススタートレック』見る。冒頭の、緊急事態と出産が同時進行になるどうしようもないシーン(パドメの出産を思い出したりするが)で、これから生まれるこの赤ん坊が、おかれることになる状況、父がいなく荒れて過ごすが自分の使命を見つけそこで仲間が団結していき友情を得て時には犠牲を払いながら敵に立ち向かう、というようなことが起こるんだろうと想像するだけで(実際そんなようなことが起こる…わかりきってる)感動して泣きそうになるのは涙腺緩み過ぎの故か。通して見ると、そこのところで、つまり今後起こるストーリーを想像するところで一番感動してしまっていた。
以前のシリーズにのっとりつつ決別するために持ち出したであろう手法がある。それによって、この映画の世界に、本来属さないキャラクター達が登場するわけだけど、そのことによってなんというか、観客の、もしくはスタートレック好きの欲求が満たされる。干渉への願望。
カークが怪獣に追いかけられるところがカメラの動き含め最高。あとは、まぁ宇宙(での)戦争なんだけど、人間が惑星めがけ飛び降りるところという行為がいとも当たり前みたく描かれていたり、宙に浮く警官とか、ウィノナとか、しくみも細かい銃から発される光線が金属に当たる時の激しい音もよかった。しかしやっぱり着弾を描くのはSFでは難しいんだろうな。