深沢七郎甲州子守唄』読み終えた。ばらばらな物語が次々と語られていく。そこで語られるのは、ある慣習や倫理観。それらは独特のようだけど、でも理解不能ではなくて、どこかで当たり前だと思えてしまうような、…また、太古の昔か遥か先の未来のことようでもある。
《(…)「ふんとに、気びがいいようのもんでごいすよ」/と言いだした。藤作やんの息子が死んだのは気持ちのよいことだと金吉ちゃんは言うのである。》(p51)
《「いいか、人の罪をあばくじゃアねえ、もし、お前が何か言って見ろ、そのために罪人が出ればお前も罪を作るじゃアねえか」》(p56)
何かをつぶやいて「気がらくになる」オカア。その何かが「子守唄」なんだろう。