石井光太『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』読み終えた。
一般的に受け入れられている家族、というか、人間の集まりの形、ではないもの、が、本書の中に多く登場する。それ、が、発生してしまう原因、というのが、人間が人間として扱われない状況、というのが何とも言えず複雑な気持ちになる。決して、良いもの、と、言い切れないことからすら、人間の善さが生まれ出る。優しさやいたわり。しかしそれも一面的でしかない。家族や親戚のために娘を銃殺し、それを後悔し続ける父親。少女売春をし、その当の少女たちに謝罪する小児性愛者。日本兵に陵辱され子をはらんでしまった妻を受け入れることができず、その罪滅ぼしのように血のつながらない売春婦たちの子供を引き取って育てた老人。
一番怖く、しかしリアリティがあるのは、選択肢がなく、「そうするしかない」、他のことが思い浮かばない子どもたちだ。彼らには所与のものしかない。未来に不確定要素がないように思えて仕方がない。ただそれも…。
スティーヴン・スピルバーグキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンNHKでやっててちらちら見る。やはりこれは尋常ならざる傑作。画面の光の処理、明暗が美しすぎて改めて度肝抜かれる。エイミー・アダムス出てたの初めて気づいたし。そしてなにより、アメリカ(国家)との闘いの物語として、この実話を映画化したスピルバーグに心打たれる。