ガス・ヴァン・サント『ミルク』を渋谷で見た。

ハーヴィーが市庁舎(の大階段)を「劇場」に喩えた時点で行われるのは悲劇だ。トスカのような?冒頭のニュース映像とナレーションの役割を一部果たすハーヴィーの遺言テープによって(それと、あくまで映画の中では、だが、2通の禍々しい脅迫状…そのうちの一通はフォントによって差出人がわかってしまうけど)それは常に意識させられる。

ハーヴィーとスコットが、地下鉄入口の階段で出会う時の、視線の交わしあいと接近の仕方の巧みさ。それだけじゃなくて、男2人のシーンが生き生きしてる感じ。それは、ハーヴィーとダン・ホワイトのシーンも含めてなんだけど。

それに派生するけど、ショーン・ペンの仕草の繊細さ。テープに声を録る時の座り方、腕の組み方、メモの見方。喜び方がチャーミングで、これは実際のハーヴィー・ミルクがそうなんだろうなと思った。

40歳のハーヴィーの誕生日にベッドで食べてたもの、スコットの誕生日にハーヴィーが作ったもの、ジャックが「これしか作れない」といってたもの、がどれもなんだかよく何の料理なのかわかんなかった、のがなんか微笑ましかった。

ダン・ホワイトが自分にもあるといった「問題(issues)」とは、なにか、普通に考えることもできるけど、ハーヴィーが、ダンを、自分たちの仲間であるといったこととか、ダンのハーヴィーたちに対する態度とかを見ると、深読みしたくはなる…。

ダン・ホワイトのチラシを渡す子供が、不自然で、しかもすぐに消えてしまう。ダンの子供の洗礼式を合わせて考えてみると、なんだか子供が不吉なもののように感じられた。

あと、白いクリームが顔につくのがめっちゃあった。