ジャン=マルク・ヴァレダラス・バイヤーズクラブ』見た。

主人公は、後のパートナーとなるレイヨンと、自身のホモフォビアを脇に置いてまでも最初に交流することになるきっかけが、ポーカーの賭け金である、という病院でのシーンに象徴されるように、ブライアン・ヘルゲランド42 〜世界を変えた男〜』のブランチ・リッキー同様、第一に「緑」を信じ、「緑」によって動く男である(だからこそ、物語の後半、レイヨンが渡す札束の重みを瞬時に理解し、言葉もなく抱擁する)。さらに、冒頭、ロデオの賭けで集めた金を持って逃げる生き生きとした動きでわかるとおり、その為ならば、目の前にいくつも「柵」があろうとも、乗り越えるだろう(挙句、警察官をも殴る)。裁判に勝つために、訴えを起こす州を変えようとするという行為が、リチャード・リンクレイター『バーニー/みんなが愛した殺人者』でマコノヒーが演じた自己顕示欲の強い判事も同じことをしていたのを思い出し、その、同じ役者の同じ振舞いでありながら、示す意味がまったく異なるのはおもしろかった。
そういう意味で、ロン・ウッドルーフは、ジョーダン・ベルフォート同様、アメリカが生み、「それゆえに」アメリカと敵対することになる人物である。
ジャレッド・レトが素晴らしい表現力で演じる、可憐さと美しさと儚さのレイヨン。デコルテの自慢をしながら、ジェニファー・ガーナー演じる女医と向かい合い、彼女の首筋に手を伸ばす一連の所作、胸を打つ。マーク・ボランの写真をはずされても何度も飾り(しかもいいとこでT・レックスが流れるんだよなー…音楽も止めさせられる)、怒られてもくりかえし買い物かごに欲しいものを入れ、ドラッグをやめることができない。
マコノヒーは、今後、また軽薄なラブコメとかに出演してほしい。今作の演技、ノーランの新作、となると、重いものしか来なくなってしまいそうで、それははっきり言ってつまらないと思うので。アカデミー主演男優賞は、ディカプリオに獲ってほしい、という個人的見解ある。けど、今回のマコ兄はすさまじいからな…。好き嫌いでいうとマッドの方が良いんだけれど。