アレクサンダー・ペインネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』見た。

特定の一つの時点(から)しか交われず、それ以前には触れることができない、ある人物に流れる時間が、老人たちの記憶(「1974年」の「空気圧縮機」と間違われた家)、建築物(オーナーが何度も変わった工場とバー、朽ちている生家)によって蘇り現れてしまうのに、目的地であったネブラスカ州リンカーンではないホーソーンという土地へ、道行を「中断」して立ち寄るという行為はふさわしい。
しかし過去は、(ウディの、この世におらず、一族団らんにも集えない兄弟、彼をもう叱れない父母のように)「死者」であり存在しないのは、嘘や忘却が入り混じる人々の語りもさることながら、ウディが、息子に購入してもらうフォードのトラック(と新しいエアーコンプレッサーはまさしく「現代」であり、もしかすると「未来」であるかもしれない)の中から、かつての恋人であったペグに対して、ほんの一瞬、互いの視線を交錯させることしかできない、哀しくも美しいシーンに象徴される。
「入れ歯」と「手紙」、探し物は見つかる、が、ただでは終わらない。


武蔵野館の前にあるインドカレー1000円食べ放題に行き(インドのMTVみたいなんが延々と流れている)、買い物をし、夜、清水崇魔女の宅急便』見た。

キキが暮らす部屋の窓の前を、風車の羽がまわり、影を落とすと同時に月明かりや星の光を遮る、それを利用した、故郷の母との邂逅。キキが初めて自転車に乗れた瞬間のワンカット(後ろから支えるとんぼ、の姿がフレームアウトしキキのアップ、カメラが引くと彼女はもう一人で漕いでいる)。子カバを乗せたゴムボートからとんぼが飛び降りて、岩にぶつからないよう頭上に掲げながら走り、再び飛び乗る豪雨と暴風と大波の中のアクション(って書いても何が何やらだけれど本当にそういうシーンがある)。度肝抜かれる嵐の中の熱唱。といった、映像が所々に存在する。それと、赤いドレスの少女サキと、黒い封筒(中身は何も入っていない!)とか、連発される「呪い」とそれをもたらす存在としての魔女、浅野忠信演じるイシ先生の「治療」(ピーターパンかよ、と思った。水の中で時計がチクタクいうのでは…?)、など、どこまでが原作なのかしらないけれど、ひっかかるモチーフが連発されている。
キキととんぼのシーンは、実写ゆえの緊張感に満ちていて良かった。し、角野栄子のナレーション(!)、キキ役の小芝風花のまさしくヒロイン然とした喋り声、LiLiCoのラジオDJ、といった、声に注目(という言い方がすでにおもしろい…)したくなった。