リチャード・パワーズ『囚人のジレンマ』

読み終えた。パワーズは『舞踏会へ向かう三人の農夫』に続いて2冊目。

囚人のジレンマ

囚人のジレンマ

読んでいる最中、やたらと"2つに引き裂かれる"モチーフの描写が多いなと感じて読み終わった後確認してみたけれどそんなに多くなかった。

《巨大な深い溝が万博を真っ二つに切り裂いている》(p43)
《人々が暮らしを営もうとしてつくる場所と、人々のまわりで彼らとは無関係に噴出する場所とのあいだに、想像を絶する断裂が口を開く。》(p46-47)
《漆黒の森に、ドア枠が長方形の裂け目を刻んでいた。》(p61)
《倒産の、事実次元の完全な断裂――過去からのまったくの離脱――を見ていると、鋭く落ちてくる波頭を超えるなかで自分の腸がぎゅっと収縮するのをアーティは感じた。》(p72)
《そのときから、少年と外界との関係は、ふたつの方向に分かれた複雑なものになったのだ。》(p101)
《相反する二つの人生が世界を真っ二つに分断する》(p242)
《私たちの運動は二つに分裂した。》(p246)

こんなに"映画"の小説であることは知らなかったので読んでいる最中興奮した。《古い映画の目録で育てられた》(p222)子どもたち。万博と戦争とアメリカとディズニーが織りなす虚構の映画製作。それでも完璧に回復されえない…のが、終盤の、エディ・シニアに起こるある出来事で…しかも大好きな『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』だったので最高だった。またパワーズ何か読もう。