ロバート・ゼメキス『マリアンヌ』


めちゃくちゃ良かった。一分の隙もなさと、それでいて奇妙な質感があり、その2つが共に1つの画面に存在しているので、物語的なもの以前に視覚が飽きることがない。やっぱりゼメキスは信頼できる。
予告でもすっかりバラしていたけど、このあからさまなCGっぷりはなんだ。例えば砂漠、ロンドンの風景、もろばれだ。そしてそれが全く嫌ではないのはなぜだ。そして、車中の砂嵐のシーン、役者のラブシーンよりも、ゼメキスの「砂のCGすごいやろ」的ドヤ顔が見えてくるのだった。
空から落ちてくる男のシーンで始まるのですがまずそれが最高。もちろん落下のモチーフをそのまま後の地下室へ向かう動き(それが「終わりの始まり」)に繋がってるのは言うまでも無いし。
もちろん鏡。マリアンヌに見させられるマックスが自発的に彼女を見るのは鏡ごし。ある疑いの後はそれが2枚になり彼女の姿が分裂する。
あとは赤いコートはやっぱり強烈…と言ってきてこれらのモチーフを扱う事やその手さばきを、よりによってゼメキスの映画において指摘することの意味のなさ(だってそんなの百も承知だろうから)をひしひしと感じる。
ケベック訛りの抜けないフランス語からは当然の如く『イングロリアス・バスターズ』のレイン中尉を思い出すし、『それでも夜は明ける』のあの大工も…なぜブラピは自身をカナダ人にしたがるのか?
しかし…よいところ挙げていたらきりがない。キャストも素晴らしい(ブラピの妹役にリジーキャプラン!いっつもこんな役やってね?と思わせるサイモン・マクバーニー!)し、ブラピ演じるマックスの手際のよい「殺し方」も最高、窓から見えるドイツ軍の戦闘機墜落のカットのとんでもなさ。最後のプロペラの止め方見たことないよ(ラストミニッツレスキュー!!!)。
もちろん、スパイ・二重スパイのモチーフはいわずもがな(それもまた『イングロリアス・バスターズ』)。機関銃ぶっ放すマリオン…。