ピーター・バーグ『マイル22』

映画には、見ている自分自身にブーストがかかるシーンがあって、そういうものがあると一気に入り込めるというか、ぐっと前のめりになることができるのだけれど、この映画の場合は、マーク・ウォールバーグ演じるシルバとの会話によって、ジョン・マルコヴィッチ演じるビショップの足元、スーツに似つかわしくない「スニーカー」が出てきたところだった。物語内におさまらない、しかし完全に外部でもない、その2つの領域が入り混じった演出/描写/アイテムであるから、ということだろうか。

そしてやっぱりピーター・バーグは、変則的であるけれど、過去作から常に、「アメリカ」の「敗北」を描こうとしてるんだなと感じた。

つまり、ともかく喋り続け、他者を恫喝し嘲笑い挑発し、"Mother"(という呼称を持つ部隊の本部の分析官)に教え(現場の状況、次にどう動いたら良いのか)を乞い続け、その"Mother"からコードネームで"Child"と呼ばれる男とは、一体何の代理表象なのか、ということ。その男はスティーブン・バノンを名乗り、ウォーレン・バフェット(とその支持者)を嘲り、同僚からはさまざまな「病名」を当てはめられるがその実ただの"shit"だと称される……。