ティム・バートン『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』


いやー最高ですね、ティム・バートン。映画に求めるものがここに揃っている。豊潤なイメージの創出、でたらめさ、時間と死と空間の不可能性を乗り越えること。
フロリダの陽光と住宅街、冷え冷えとした照明のスーパーマーケット、靄に包まれた夜に差し込むヘッドライト、どんよりとした灰色の海と空と岩場に包まれた島、お手の物なゴシック調の屋敷、そしてファウンドフォト/トリックフォトの不気味さと奇妙な愛らしさ…。
ぶっ飛んだ沈没船の蘇生、子どもたちだけの進軍・奪還劇の戦略(お菓子だらけのモンスター!)、の途方のないでたらめさには喝采を送りたい。
(原作準拠ならばぜひ読んで見たい)祖父の幼少の頃にポーランドに巣食っていたモンスターはおとぎ話では無いというエピソード、"残党"、"hunt"という単語や、ホローガスト(hollow)という狂気に満ちた造語、の使い方には明確な意思を感じさせる。似非科学、不老不死と超人化("higher-being")、無根拠な選別と差別の論理と並行して行われる無差別虐殺、狂気の収集行為(身体のある一部が集められたイメージがある)、をナチス的と言わずして何と言うのか…。
もちろん、望まずして血統により受け継いでしまった異能力を持つ人々という造形には、には、彼らがなぜ簒奪/虐殺の対象になってしまったのか、という問いに対する慰め(回答では無いし、そもそも回答など無いのだ)とも言える。
しかもモンスター/ホロー達の残虐な行為は現代においても行われ続けている、というのもまた、明確なメッセージだろう。あえていうならば、ナチス的なるもの、は滅んでいないし、見える(わかる)者には見える(わかる)のだ。
何よりエイサくんの美青年っぷりには舌を巻いたし(あの手足の長さね)、登場する子供達の愛らしさも、さすがティム・バートンと思いました。ボウガンというセンス(エヴァ・グリーンとエイサくんそれぞれの構える姿が見れる)も素晴らしい。サミュのあからさまに作り物な鎌や斧のクオリティのちょうど良さよ。