ナチョ・ビガロンド『シンクロナイズドモンスター』


出鱈目で、虚無的に異常、いかれてて、この世のものとは思えない、人間じゃない、死者でも幽霊でも神でも宇宙人でもない、まったくカテゴライズ不能な何者かによって「見られる」ことで作られた映画であるところの『ブラック・ハッカー』の監督最新作として期待して見ました。


すごく強くもなく、すごくダメでもない、いたって普通(と言っていいでしょ。この人をダメな人とする言説には反したい)の女がいる。抑圧し支配する男がいる(それは男として"普通"なのだ)。前者と後者の対決が、とんでもなく偏屈に、遠回しに、綺麗ではなくぐだぐだに、レイヤーを重ねて、まったく奇妙に描かれる。
とんでもないことが起こってるのに、傍目には全くそう見えない、という事態は現実にも様々な局面で起こることだけど、この映画は、その状況を様々なサイズで重ねて表現してく。人間と怪獣、痴話喧嘩とDV、会話と暴論……。