ドゥニ・ヴィルヌーヴ『ブレードランナー 2049』





まずはこんなことを散々言ったことを謝罪したい。ヴィルヌーヴさん、すみませんでした。
そして見終わったらこれです。
舌の根も乾かぬうちに、何を言ってんだこいつは。

それにしても……ナボコフ『青白い炎』が登場することなんで誰も教えてくれなかったんだ!!!(無茶苦茶言ってる)

……あ、『青白い炎』の特殊でイカれた形式を、ブレードランナー旧作と新作の関係/『2049』の捜査官Kのキャラクター造形、とパラレルになってる、って言うのは、まあそうっすね…って感じ。そうすよね……(あのー、そこは大した問題じゃないっすよ……)。

問題は、ナボコフアイデンティティクライシスだし、信用できない語り手だし、追う者と追われる者の混在だしさあ。まさかブレードランナーを介してディックとナボコフが、"記憶"と"自己同一性"の作家として繋がるとは思わんかったなあ(考えすぎですか???)。

"禁忌"感がハンパない映画だなと思ったけど、そう感じるのは自分が男だからかもしれないなと思ったり。ここまで「男か女か」が重要な映画だとは思わなかった。まさか現代において「性別」が重要なモチーフとして扱われるとは!その反時代的っぷり、そして、アクションのアレさ、殺人シーンの呆気なさ、すら、もしかしてナボコフ(的トンチキさ)なんじゃないか、と思ってしまう自分が悔しい。から、誰かヴィルヌーヴに聞いてくれ〜(もしかしてパンフに載ってるんすかね)。

(母親に『ブレードランナー2049』面白い?と訊かれてナボコフが…とか答えたの、今考えたら狂ってるな)


もちろん、冒頭の荒廃した風景の空撮からめちゃくちゃぐいぐい来てしまって最高だなと思ったんだけど(自分にとって、「移動」するヴィルヌーヴは好き、ということなのかと思った)、反面、気になったのは室内。マダムの部屋でデスクに座るラヴのカットとか一瞬目を疑う。Kの部屋の構図の冴えなさ。ディーキンス御大も「ごちゃごちゃ物多くて狭いとこ撮りづれえわあ…」って思うのかなと。あと編集の問題もでかい。ラスベガス?のホテル?をKが探索するシーンとか、なんか違和感あるもん。動きが妙な感じで繋がってるというか。
しかし室内でも、度肝を抜かれたのは、ウォレスの部屋でのある人物たちの会談シーン、その場にいる2人に当たる光が変化していくんだけど、一時、2人とも影になって全身真っ黒になるカットがある。完全に見えなくなるのだ。体感的にはちょっと長め。これは見ててどきどきした。


以下雑感です。
・『東京喰種』『亜人』『ブレードランナー 2049』はどれも瞳のアップがファーストカット
・みんな大好きマルちゃんことデヴィッド・ダストマルチャンと出自不明の胡散臭い商人にぴったりなバーカッド・アブディが出てるからうれしい。マルちゃんは、ちゃんとぴったりの、彼相応の目にあうのでわかってんな〜と思う
ツイッターで言ってた人がいらっしゃったんですが、今作は『トゥモロー・ワールド』の続編でした。自分では気づかなかった。風景の質感も通ずるものがある