スパイク・リーオールド・ボーイ』見た。

評判がやけに悪かったので、どうなんだろうかと不安感ありつつ見たのだけれど、…いいじゃないか。好きだ。もし6月中に見れてたら上半期ベストに入れた。
冒頭のフィルムの画の質感からたまらない気持になり、ウォッカを紙コップに入れてストローで吸うしぐさがたまらないし、その後の電話の痴話喧嘩での刻むカットバック(この映画、やたらと鋭い編集が多い)、レストランでの失態からの泥酔して号泣しゲロまみれ、友人の店の前での痴態、そして雨とチャイナタウンのネオン、と、うれしくなる描写が続く。
そこから監禁部屋なんだけど、そこで違和感を覚える。質感が変わり、フィルム感が薄れる。それでもアップになるとすこし回復するのだけれど。編集のテンポもすこし良くないし(いきなりひげだらけになる等の時間のすっ飛ばしはあまりうまくいってない)、うーんと思ってると、再び外のシーン、になるとまた変わる。ビデオっぽさが入ってくる昼の風景。それでやっと、1990年代(監禁前)、2000年代(監禁中)、2010年代(解放後)、と映像のテイストを変えているのでは?と思い至った次第(部屋のつまらなさ、ニュース映像の冴えなさ、も、観客と主人公両方をだますための装置であると考えればなるほどといった感じ。そこはどーでもいい、見せたいのはテレビの出鱈目さ・曖昧さだ、ということか)。そうした変化を見ていくだけですでにおもしろい。
それにハンマーアクションの長回し。動き続ける(演出上の「休み」が入るけれど、それが停滞にならずかえってリズミカル)すばらしさもあるし、舞台となっている「互い違い」の空間も、カメラの動きと相まって、良い選択。
シャールト・コプリーが全裸で(関係ないけど、わざわざカメラを動かしてジョシュ・ブローリンの尻を撮っていて、こだわり感じた)、夜、ライトの差すプールで泳ぐのも、それが高層ビルにあるのも、木造のコテージのようなモーテル、のネオンサインを角度を変えて捉えるのも、これだよこれ、という感じ。繋ぎ含め、洗練はされていないし、ともすればださいのだけれど(PCのブラウザの画面、検索結果の合成の「ちゃちさ」!)、これはこれで良いんだ、と強く思う。
エリザベス・オルセンがやられそうになる時、ソファーにくくりつけられた尻が脱がされないのに一瞬あれ、と思ったけれど、あとでばっちりやってるので帳消し。惜しむらくはひどいぼかし(せっかく頭ふっとばしもあるのに)。ファック・ザ・映倫。サミュエル叔父貴のマザファカは値千金(衣装の原色っぷり)。モヒカンの色で時代の流れを表現するのとか、塩かけられるのにびびってるのとか、最後ダイヤを出される時のあっけに取られてる表情とか笑った。
主人公ジョーを表して、昔を知る女性が「ハンサムな子だった」というのに頭の中に、いやかっこいいとは思うけどハンサムとは違くないか?、と浮かんだけれど、その後登場する過去のジョー役を演じる男優が、ジョシュに似つつハンサム、というなかなかにせまいストライクゾーンをとらえているビジュアルですごいです。
しかしジョシュ・ブローリンフィルモグラフィーは間違いなさ過ぎて震えるね。
ちなみに。原作で一番好きなのは、五島が、食事が中華料理だったから栄養のバランスがとれてたのかもしれない、という持論を披露するところ。これが自分にとっての狩撫麻礼節だし、中華食べるときはいつも思い出すのだった。