ボルヘス『続審問』読み終える。
訳註の人名が「未詳」だと、ついボルヘスだったらやりかねん…と考えてしまうのは、収められている文章が評論のようでも小説のようでもあるからで、実際解説でも触れられていたけれど、扱うモチーフとしては一貫してる。円環・くりかえし・反復/(それらによる)あるもの(人)とあるもの(人)との同一性…つまりは主体(の特権)の否定、世界=書物、過去が未来に先行すること(線的時間の否定…どころじゃなく時間否定)、など。また(先行作家を「作り出した」)カフカホーソーン(まず出来事ありき)やチェスタトン(どうしても不気味さに目をやってしまう)について語る言葉は魅力的だ。
ともかく、こだわっているのは、何か、当たり前にあるものをなんとか筋が通るように説明しようとして、考え抜かれた(時には直感も理由した)結果、突拍子もないような理論が生み出されてしまう、といった出来事で、ボルヘスは、こういった人間が考え方を愛していたんだなと思う。多少の揶揄はある…のかもしれないけど。
舞台に「二人目の役者を登場させた」アイスキュロスのエピソードはとりあえず半端ないな。
そして、自分(の時代や出来事)を特別視すんな!(特別視しない、とは…それを重大なものとしない、どの時代のどの人間にも起こることだ、と考えることでもあり、(逆じゃないんだけど…言葉の字面が逆っぽい)普遍的なものと思うな、誰もが感じる(感じてくれる、わかってくれる)ものじゃなく、個人が個人だけで感じることにすぎない、と思うこと)というメッセージを勝手にうけとりました。