橋本治『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』読む。
「負け組」とは「日本経済そのもの」であり、外の「勝ち組」を引き入れることでそのことを隠蔽した。(p60)
エコノミストは何かを言い、エコノミストの提言に耳を傾ける人は、それを自分なりに解釈して、ある行為に及びます。「ある行為」とは「投資をする」であり、「エコノミストの言ったことを、自分なりに脚色して広める」というようなことです。そういう関係の中で、「悪意のないもの」は、いつか「悪意に似たようなもの」として作用し始めるのです。「悪意はない、しかし、根本のところに“悪意になりかねない要素”も抱え持つ」というのは、そういう投資の世界を動かしているあり方についてです。》(p69)
《「システムの危機」とは、「たった一つの方向性」しか持てなくなってしまっていることで、「勝ち組を独裁者にしてこの現実を更にややこしいものにしてしまうことを回避する方法」は、「たった一つしか方向性のない世界」を、「複数の方向性を持つ世界」に変えて行くだけなのです。それが「システムからの脱出」で、そもそも、「世界」というものはもっと不便なものなのです。/いろいろなものが錯綜していて、それゆえにこそ不便な「世界」がある。だがら、「これを整理してシステム化すれば便利になる」と思う。システム化すれば、方向性はどんどん「一つ」に近づいて行く。なぜかと言えば、それこそが「便利なあり方」だからです。誰にとって便利かと言えば、それはもちろん、「システムにとって」で、「システム化を実現させて行く人にとって」です。》(p99)
《かつての「豊かになれ、大きくなれ」という「主導」は終わっているのですが、それが終わった後の日本経済は、「輸入を増やして個人消費を拡大せよ」へと方向転換して行きます―「方向転換せよ」とアメリカに言われて、「官」はそのように方向転換したのです。》(p135)
アメリカは、「世界経済には限界がある。その基本容量を守れ。外に展開する前に、自分の内部を掘り下げろ」と言って来ました。それが「内需の拡大=個人消費の拡大」という「日本のフロンティア化」です。(…)そのフロンティアの名は、「欲望」です。日本人は、「己れの欲望」と向かい合うことになるのです。》(p160)

外を食いつぶすことから内を、自らを食いつぶすことで生き抜いていくしかなくなってゆく。自傷的世界。それは自分一人だけの、たった一つの世界。

KREVA『心臓』での、言葉を発しコミュニケートすること、への徹底した懐疑はすげえ。
Tahiti80SURFACEオリジナルラブは似てる。ヴォーカルのテンションは違うが。