クリント・イーストウッド『運び屋』

ちょっとこれ、一体なんなんですかね。何を見たのかという。 これはもう、イーストウッドの『紋切型辞典』(フローベール)ではないかなと。携帯、メール、Google、「タトゥー」、綺麗に切り揃えられた髭、「マッチョ」、「タンクトップ」、…など、自分より”…

ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン『スパイダーマン:スパイダーバース』

主人公マイルスがやたらと何かを運ぶ映画だった。しかもその輸送は常に失敗する。しかし最後には成功するわけだけれども…。 映画というのは、原理的には、撮影時に何度も繰り返し同じことを演じ、撮られた映像を何度も見て繋ぎ、完成すれば何回でも同じ作品…

ジェームズ・ワン『アクアマン』

最初のシーン、主人公アーサーが生まれるに至る、ある男女の出会いと別れを、愚直に素直にかつ癖の強さも外さずに、過程を描くくだりでめちゃ泣いてしまった…涙が溢れて止まらなかった。こういうのに弱いんですよ。 そして、ジェームズ・ワンをよく知らない…

デイミアン・チャゼル『ファースト・マン』

近年の宇宙(を舞台にしている)映画は基本的には(まだ実現していないものも含めた)先端技術によって完璧に構築され保護された空間が登場する(そしてその範疇外の出来事・存在によって破壊される、というストーリーが待ち構えているわけだが)が、この作…

ピーター・バーグ『マイル22』

映画には、見ている自分自身にブーストがかかるシーンがあって、そういうものがあると一気に入り込めるというか、ぐっと前のめりになることができるのだけれど、この映画の場合は、マーク・ウォールバーグ演じるシルバとの会話によって、ジョン・マルコヴィ…

M・ナイト・シャマラン『ミスター・ガラス』

泣いた……これはもうほんとに「シャマ泣き」です(?)。この作品に関わらず、長ければ長いほどスムーズにいかず、一手一手で引っかかっているような奇妙さのあるシャマランの格闘シーンになる終盤は、普通にずっと泣いていた。それはもう、ここまでたどり着…

ダン・ギルロイ『ローマンという名の男 ー信念の行方ー』

主人公ローマンの、記憶力や集中力が高く、空気が読めず自分の考えに固執して我慢できず思いついたことを口にしてしまう、時に自身の周囲の会話がまるでフィルターかかったように聞き取りづらくなってしまう(と思われる演出がある、比喩としても取れるけど…

マーク・ウェブ『gifted/ギフテッド』

冒頭の朝食を食べるシーン、2人の人物の顔のワンショット、そのサイズや構図、ワンカットの長さ、切り替えしのテンポを見ただけで、もう満足、という感じ。この映画が信頼できるというのがすぐわかる。わかってしまう怖さ。カメラワークはすばらしい。ここぞ…

久保明教『機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ』

機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ (講談社選書メチエ) 作者: 久保明教 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/09/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 人間と機械・非人間はお互いに影響を与え合って変化する。…

2018 BEST ALBUM + α

今年も去年と同じくよく聴いたものから選んだ。結果若干反動的(?)なものになってしまったけど、個人の趣向なので仕方がない。 気分としてはアルバムの完成度がめちゃめちゃ高まってないなら、かえって寄せ集めというか、バラバラのほうがいいんじゃないか…

クリストファー・マッカリー『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

ローグネイションと今作は真の意味で2部作(直結してるという意味ではない、けど、2本を続けて1つの作品としても遜色ない)なので、さしずめ"fall nation"とでも言えばいいのかな…とか考えてた。 ちょっと…完全に動揺してしまった。ここまでの美しい、様々な…

テイラー・シェリダン『ウインド・リバー』

この映画は、2つの顔によって挟まれている。 冒頭から矢継ぎ早に現れる「死体」たち。その後も、本作では戦争もテロも猟奇殺人も起こらないのだが、最終的には数々の死体が登場する。そしてそのなかで唯一、我々観客がたっぷりと時間をかけて「死に顔」を見…

佐藤信介『BLEACH』

シネスコで、町の全景や、屋上の空含めた画などがとてもよく、それを見せたいがためか、登場人物もやたらと屋上に行く。自由が丘っぽい最後のバスロータリーのシーンも、左右に広く人物や物を動かしていて画がキマっていた。 そしてとにかく、説明が最小限な…

リチャード・リンクレイター『30年後の同窓会』

リンクレイター、あんたって人は……つくづく良い映画を撮りますね〜そしていささかもぶれることなく反米の映画作家であると。ただ、今作はその反米っぷりがあまりにもあからさま、直接的なのに少し動揺した(『6才のボク〜』の時の立て看板も露骨ではあったけ…

ルカ・グァダニーノ『君の名前で僕を呼んで』

冒頭強調されるのは、ドタバタとした足音、過剰にすら思えるドアを閉める音。アメリカからやってきたオリヴァーが、そのドアの音にビクッとするちょっとした描写もある。その音は、その後この家の中で、人物の動きを姿を見せずに描く手段となる。人々は他人…

アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』

いやしかし、ルッソ兄弟万能か?CGのキャラクターのアクションて…とか思ってる頭が吹っ飛ばされる演出力。多種多様なキャラクターの動きの描き方の巧みさ。 冒頭のあの戦闘シーン、キャラクターのサイズ感がちょうど良いし、そもそもサイズ感をちょうど良く…

スティーヴン・スピルバーグ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

最初のシーン、絶対にこうで始まるだろうなというシーンで始まるのでうれしく、それがわかった私は実質スピルバーグじゃないでしょうか(違う)。 そして、最後にはこれ。『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、最終的には良すぎるバーグだろ…となった…

リー・アンクリッチ『リメンバー・ミー』

死者、音楽、記憶といった1つ1つがかなりヤバイモチーフの繋げ方、取り扱い方の、針の穴通すような正確なコントロールっぷり。そして、「行きて帰りし」物語、無鉄砲で未熟だけど信念のある主人公、旅を経てなされる成長、ってつくづくピクサーの凄まじさを…

ライアン・クーグラー『ブラックパンサー』

1992年のプロジェクト、バスケットコート(子供達が、ティム・ハーダウェイみたいに……と言っててうわっカニエじゃん、と思った。"Like Tim, it's a Hardaway"……)から子供達が見上げる曇天越しの飛空艇の光。それはまるで宇宙から飛来したUFOのよう。そのUFO…

クリント・イーストウッド『15時17分、パリ行き』

とりあえずイーストウッドでいうとまさかの『ヒアアフター』の系譜だったの驚いてる。卑近な言い方してしまえばスピリチュアル的な、運命論的な。と考えて、最近のイーストウッドはみんなそうかと思い至った。 しかしこれ本当に一体なんなんだろう。いや何も…

マイケル・グレイシー『グレイテスト・ショーマン』

P.T.バーナムという「マジでヤバイ」人が今際の際に熱("Your fever")にうなされて見た走馬灯のような映画(バーナムが「どうしよう……そうだ!"ユニーク"な人だ!(目キラッ)」ってなるのとか言い換えの怖さ感じた)。夢と妄想と理想と願望が入り混じって…

ニコライ・アーセル『ダークタワー』

はっきり言って大好き100万点。めちゃくちゃ良かった。 神話のない国アメリカで、病的で狂ってパラノイアックな物語を紡ぎ続け、我々の想像力を豊かにしてくれている偉大なるスティーヴン・キングへ敬意を表し感謝したい、と強く思った。病んで狂った神話が…

マーティン・マクドナー『スリー・ビルボード』

最っっっっ高のヤバ映画。ビルボード=広告("Billboard lady"という鮮烈なイメージのフレーズ!)も、そこから、広告屋、契約、契約金、法律、放送と報道、そして警察、と数珠繋ぎに溢れ出てきてとまらないモチーフが、ピンチョンを思わせる。そうなるとさ…

キャスリン・ビグロー『デトロイト』

この構成の歪さ、異様さはなんなんだ。もちろん事実は小説よりも奇なりで、実在の登場人物たちの最早奇怪と言える現実の言動(そういった人物に対して何度も「ドラッグやってんの?」という問いかけがあるくらい)や、遭遇する有り得ない出来事によって要請…

ディーン・デヴリン『ジオストーム』

こういう作品を自分としては「ウェルメイド」と言いたい。"よいもの"でした。 別にそう思ってる人がいてもいいんだけど今作はエメリッヒではないと思うし、そもそも、なんていうんですか?バカ映画(こういう言葉大嫌いだけど)とするのマジで全然違うと思う…

買った本

金井美恵子『砂の粒 孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集』 フィリップ・ロス『素晴らしいアメリカ野球』 横田増生『ユニクロ潜入一年』 上間陽子『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』 吉田健一『酒肴酒』 大和田俊之『アメリカ音楽史 ミンストレル・ショ…

マシュー・ヴォーン『キングスマン:ゴールデン・サークル』

多分ノイローゼなんだろうけど、記憶のモチーフだけならまだしも、なんと鱗翅学(しかも、諦めた幼い頃の夢!)、視界の中に飛び交う蝶のイメージ(それが過去や記憶と結びつく)、加えて故郷の喪失、異国としてのアメリカ、まで揃っちゃうともう……またナボ…

2017 BEST MOVIE 10

この年齢でかよ、って感じもあるけれど、自分の好みがより明らかになった。嫌いなものもより明確になってしまった。映画が好きな人が作った映画が好き。自覚あればいいんだけど、自覚なく上っ面で表層のものまねしてるのが我慢ならない。だから、ジョーダン…

瀬々敬久『8年越しの花嫁 奇跡の実話』

自分の大大大好きな『ウォーリー』をやられてしまうので泣かずにはいられなかった。 序盤に土屋太鳳が佐藤健の目の前から2度姿を消して、2度とも彼の前に「戻ってくる」シーンがあり、それらを見た瞬間、この後に起こる出来事の予告に違いない。(「戻ってく…

2017 BEST ALBUM 10 + α

アルバム通して良く(繰り返し何度も)聴いたもの、という単純なジャッジを適用すると、本当に(自分にとって)聴きやすいものが残ったという感じ。10.HYUKOH『23』23アーティスト: HYUKOH出版社/メーカー: トイズファクトリー発売日: 2017/06/07メディア: C…