瀬々敬久『8年越しの花嫁 奇跡の実話』


自分の大大大好きな『ウォーリー』をやられてしまうので泣かずにはいられなかった。


序盤に土屋太鳳が佐藤健の目の前から2度姿を消して、2度とも彼の前に「戻ってくる」シーンがあり、それらを見た瞬間、この後に起こる出来事の予告に違いない。(「戻ってくる」という言葉が実際に発せられる)とすぐわかる、というかわからされてしまうことがおそろしい。そして、多分これは土屋太鳳が戻ってきたというより、佐藤健に戻らされてしまうということなんだ。というのも彼は作中で、未来を予言し幻視しているから。


佐藤健が車を整備しトルクレンチ(だと思う)を回す姿、そして彼の帽子のかぶり方(耳が少し入るほど深くかぶる!)でもう優勝してしまっている。
そして土屋太鳳のメタモルフォーゼのすばらしさ!変身し変形し、年齢も操作する。そして、車椅子を使いこなすことが優れた女優の必須条件、と言いたくなっちゃう方向転換、ブレーキのかけっぷり。


作中の「壊れる」ことと「直す」ことにまつわる言葉を聞いて、今年の映画で言えばジャン=マルク・ヴァレ『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』を思い出した。あれも今作も、壊れてしまったものをどう回復するかについての映画だけど、対処の仕方が違うよね。壊れたものが完全に元どおりになることはない、ってところは共通してますが。ひたすら壊し続ける『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』のジェイク・ギレンホールと、ひたすら直し続ける今作の佐藤健


エンドロールの映像に気を取られて、衣装が誰か見るのを忘れてしまった。チャンピオンの着古したスウェットやノースフェイスのジャケットなど、健の衣装はどれも良いし、北村一輝演じる整備会社の社長が、作業着の上に羽織る革ジャンのリアリティもグッときた。


つーか健とハマケンって、黒沢清のリアルじゃん!という…黒沢さんも瀬々さんや廣木さんや塩田さんみたいな題材で撮ってほしいよ(話を持ってくプロデューサーがいるかどうかって話もあるだろうけど)。