バルタザール・コルマウクル『2ガンズ』見た。

最高かよ。確実に今年のベストに入ってくる。デンゼル・ワシントンマーク・ウォールバーグ共演、って言ってどうせほとんど2人一緒のシーンなんて無くて、切り返しのカットバックとか使いまくってるだけでしょ、なんて、見る前に思ってしまって心から謝りたい。そのまったく逆。


荒野で裏切られ仲間に襲撃される、ウォールバーグ演じる海軍士官スティグが、岩場の物陰に隠れる姿をカメラはとらえ、それから上部へと向けられると裏切りの張本人である少佐がいて、また降りると彼の姿がなく、そこにすばやく敵の兵士が入ってくる、一連の流れと、それとは別のくだり、スティグとワシントン演じるボビーの車が、民家の塀につっこんでぶちぬきながらの並走、が、短いワンカットで描かれていて、それだけで(しかし、その「だけ」がどれだけ貴重で、見ることの困難なものであることか)この作品を絶対支持しなければならない。
さらに、先述の荒野で、スティグは、その場から逃走する際に、自らが使用するものではない「もう1つの」車のキーを谷底へ投げ捨て逃走する。そして別の場面では、出発する瞬間に、そこに置いてある車のタイヤを撃つ。自分たちに対する追跡を阻止するこれら2つの行為の迅速さ、的確さ、は、この映画の、1つ1つのシーン、カット、演出、カメラ割、「造作」についても言える。ダイナーでの、携帯電話とその会話を用いた空間の接続には「わかっている」感しかないし、冒頭・タイトル、からの時間の巻き戻しの明確さは、コルマウクルの爪の垢を『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』の監督の口をこじ開けて無理やり飲ませたいくらいだ。


ボビーが、海軍基地に忍び込むが当然のごとく警報が鳴り、緊急事態に陥る。観客は、まず、一瞬の短いカットの中で、彼が逃げ込む一室に、海軍の制服が掛けられているのを見て取ることができるはずだ(そうでなければならない)。当たり前のように、それを物色し、そのうちの一着を手に取る。
しかし、その部屋で、着替えは行われず、肩にかけるようにして持ち、そのまま、調理場へと移動するのだ。そしてガス栓を引っこ抜き、冷蔵室へ入りながら扉を薄く開け、一発撃つ。引火し燃え上がる炎。そして部屋、廊下、窓を破壊する猛烈な爆発。それらが止むと、銀色の分厚い扉を開け、白いユニフォームに身を包んだデンゼル・ワシントンが「ゆうゆうと」現れる。我々はその圧倒的な姿に、これまた当然のごとく、『クリムゾン・タイド』の若き海軍少佐を思い出さずにはいられない――ロシアンルーレットで決して銃弾を受けることのないという演出だけでも、監督のデンゼル先生に対する絶対的な信頼を感じるし我々もまた同じである(制服を着させずにはいられないのだ)――。
また、「かわいい奴」と評され、ウィンクを繰り返すスティグは本来、40代のマーク・ウォールバーグの役柄ではないだろう。もっと若く、「つぶらな」瞳、となった時、今のハリウッドでは誰なのか、はっきり断言してしまえば、クリス・パインであり、そしてそれは『アンストッパブル』なのだ。
しかし、裏を返せば、ウォールバーグであるからこそ、亡くなった映画監督の旧作ではなく未だそして永遠に撮られることのない最新作となったのかもしれない――言わずもがなだがあえて付け加えれば、このボストンの(かつての)荒くれ者でなければ、ここまでの口汚い丁々発止のやりとりと分厚い肉体の激しい身ぶり手ぶりはできなかっただろう――。
終盤、空を舞う大量のドル札の中、行われる壮絶な銃撃戦が、スローになった時は涙せずにはいられなかったし、雌雄が決し(それは主人公たちが、敵の男どもを皆殺しした、ということだ)、2人肩を組み、大きな邸宅の白い門を出、メキシコの、奇妙に色が混ざった夕暮れの空の下の荒地に向かって去る男(たち)、は明らかに『ワイルドバンチ』なのだから恐れ入る。

そうか…ポーラ・パットンについても語りたいところだけれど、それに関しては、『フライト』のファーストカットを思い出せ、というところでとどめておきたい(同等である時点で驚異的かと)。

しかも上映時間は109分。