最近見た映画。
キンバリー・ピアース『キャリー』

見始めてすぐ、あ、最高だ、とわかった。
クロエ・グレース・モレッツ演じるキャリーが、「巨乳」で、肉感的で、顔も可愛く、「だから」作中でここまで貶められる説得力がない、みたいな内容の記事を、見る前にキネ旬だか別の雑誌だかで読んだんだけど、もしこの映画を見てすらこういう意見を言えるのなら、くそくらえだと言いたい。
なぜなら、この作品は、少女を追い詰めるそういう尺度や価値観に対して中指を立てているのだから。
それは、陰惨な虐めを行う代償にプロムを失うクリスの悲しみと悔しさの入り混じる表情、そして殺される間際にキャリーといわくいいがたい複雑さのある視線を交わすシーン、を繊細に表現していることからも伝わってくる、はずだ。つまり、彼女「たち」(ジュリアン・ムーアの母親も)をこの状況に追い込むのは誰(何)なのか、ということ。それは前述のような文章を書く「男ども」である。ぐるぐると、登場人物のまわりを動くカメラワーク…。
ましてや『キック・アス』を引き合いに出すなんて愚の骨頂。ヒット・ガールの残虐行為の意味を考えたことないのかな。
心の底から、日本でプロムが一般的になってなくてよかったーと思った。でもなりそうだね。


スティーブン・ソダーバーグ『恋するリベラーチェ』

リベラーチェが、イーヴリン・ウォー『ラブド・ワン』の映画版の出演していたことを知った時はびびった。だからこの作品のラスト、マット・デイモン演じるスコットがリベラーチェの葬儀で、彼の「最後」のステージを幻視するシーンがあるのだと思った。ハリウッド、演出された(偽装されたとも言える)死。そしてここで、ウォーを介して同世代の二人の映画監督、リチャード・リンクレイター(『バーニー/みんなが愛した殺人者』はやはり、『ラブド・ワン』の変奏と言えるのではなかろうか)とソダーバーグが結び付く。
この監督を信用しようと気にさせられる、冒頭、2人の男が、騒がしいバーでカウンター越しに見つめあった後、横に並んで、交互に耳に口を近づけながら自己紹介し合うシーンの丁寧な演出・ワンカット。
そして誰しも言及したくなる薄目のロブ・ロウ


ブライアン・ヘルゲランド42 〜世界を変えた男〜

ラスト、実在する登場人物たちのその後が紹介されて、そこでもう、えーっと声を出しまくった。
チャドウィック・ボーズマン演じるジャッキー・ロビンソンの、球場(ballpark)で、進塁し盗塁を狙う時、全身が研ぎ澄まされ、アップで捉えられる、細かく動く指先、といった肉体表現が見られるようになると、この映画に俄然のってくる。それは作品の観客だけでなく、「試合」の観客もまたそうにちがいない。それが、皮のボールが木のバットに当たりはじけ飛ぶ音をきっかけとした、抑圧からの解放だからだ。
ブランチ・リッキーを演じるハリソン・フォードは非常に素敵だったけど、この役を、そう例えばフィリップ・シーモア・ホフマンとかがやっていたどうだっただろう、と想像したくなる気がしなくもない。
当時のユニフォームとかキャップの、今のスポーツ用品にはない、質感、くたっとした感じとか良いなぁとずっと思いながら見ていた。
そして宗教と資本主義が人種差別主義を「淘汰」するというのはどうなんだろうか、とは、ぼんやり思った。ぼんやり。まぁでも最終的にはsympathyなんだけども。


アリエル・ブロメン『THE ICEMAN 氷の処刑人』

最初っから、躊躇なく素早い動きでむかつくやつの首をナイフで掻っ切るマイケル・シャノンがいるので安心して見ていられる映画です。ウィノナ・ライダーも冒頭からフルスロットルに「強調した」可愛さ演技してますし。
それと、がんがん銃をつきつける(すごんだりする割に意外とやさしい)レイ・リオッタもいます。車中で2回。
あとパンフで、クリス・エヴァンスに対して、「彼は知名度で貢献した」的なことを語っているシャノンさん正直かと。クリスは対して、まじマイケルの演技にかけるストイックぶりすげーっす、とか言ってんのに。かわいそう。


トール・フロイデンタール『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々/魔の海』

最初、訓練所でのアスレチック的なものを使った競技で、上下の動きを強調していたので、おっ、と思っていたら、その後は、敵の襲撃やら、目的地へのクエストやら、ひたすら平面的な前進の運動だった。でまた中途半端に海の怪物に吸い込まれるシーンあったりするからそういうこだわりはないのかなーと思いつつ、でも普通におもしろい。のは、原作の力も当然あるんだろうけど。
スタンリー・トゥッチ出しちゃうって、ハンガー・ゲーム意識してるんだろか(この役、ロバート・ダウニー・Jr.とか似合いそうだった)。まぁでも、どうも他の児童文学原作の作品を思い出しがちだしなぁ…。
そしてやっぱりローガン・ラーマンきらいじゃないと思ってしまう。