柴崎友香寝ても覚めても』読み終えた。
《そのとき、目の前のすべてが、過去に見えた。モニターの中ではなくて、外に広がる、今ここにあるものこそが、すべて過去だった。カメラに撮られて画像の中に収まり、過去として、記録された光景として、そこにあった。(…)こうやって、時間が確実に過ぎていくことが、唐突に、一度に、目の前に表された。わたしは、とんでもないことを知ってしまって、しばらく表情を失ってモニターと現実の光景とを、同じ視界の中に見ていた。》(p118-119)
《自分の声が耳に聞こえたとき、東京のどこかにいる自分が今日のこの瞬間を思い出しているみたいな、気がした。》(p121)
不穏さと、ぞっとする恐怖が潜んでいる小説だった。冒頭の、展望台に集まる人々の描写、不気味な人間しかいないようだ。主人公も異常である。彼女ではなくて、彼女が見ている景色やテレビや写真、見ているという行為しか信頼できない。だからこそ、彼女自身の意志ではなくて、見てしまったものが彼女を目覚めさせる。
小中千昭『恐怖の作法 ホラー映画の技術』とブルボン小林『マンガホニャララ』買った。