トーキョーワンダーサイト渋谷で「都市のディオラマ BETWEEN SITE & SPACE」を見た。
エキソニモのインスタレーション「DEF-RAG」は、鉄の部品を組み合わせて作った山に、画面やら音の出るパーツやら頭頂部に時計やらがついていて、音楽、というか、音、というか、メロディがあるようでない音にあわせるようにそのすべてや、当てられている照明や、そばに別についている画面やらが作動しだす、という、なんとも言葉にしにくいもので、実際この文も説明にまるでなっていないのがだめだなとも思うんだけど、まぁそれはともかくとして、この作品には2つの時計があり、1つはオブジェ(と言っていいのか、という疑問はあるけれど)についているもの、もう1つは右の壁に付けられたモニターに映し出された映像としてのそれであって、これらは両方、公園のあの巨大な時計で、実際にある方は、針が前に進んだり戻ったりを、音のリズムにあわせて行っているように見え、映像の方は、これはもう明確に、何種類かのコマが、リズムにあわせて切り替えられていって(要するに、針がものすごいはやく動くように見えて)いる…、でこの2つの時計は、ある時間近辺を行き来してるだけなんだ、というのに見ながら気づいて、それは5時だ。公園の時計が、小学生を帰すときに鳴る5時の時報…が、この音なのか?
パラモデルプラレールを使ったのは、普通にかわいい…部屋中に張り巡らされたレールは、血管のように見え、ならばここは人体内部ということなんだろうか、と考えたり、いくつかのレールは、つながることなく途絶えていて、この作品は、未完成にとどまっている土木工事(資料の中に「どうか、工事が永遠につづきますように…」的なタイトルのドローイングもあった)のようでもある、と思ったりした。

古本屋でサム・シェパードモーテル・クロニクルズ』と『現代美術事典』(っつっても1984年…)と『二葉亭四迷全集 第五巻』を買った。

Bunkamuraザ・ミュージアムジョン・エヴァレット・ミレイ展を見た。描かれた人々の、特に子どもの、視線にはっきりとした強さがあり、というかありすぎて、そこに曖昧さはなく、例えば「ローリーの少年時代」の少年は、船乗りの話に聞き入る視線をあからさまに示していて、また、「初めての説教」「二度目の説教」という連作は、前者で、子どもは目をしっかり開けて教会での説教に聞き、後者では、興味がうせ(というよりも子どもの、突然の「電池切れ」といて感じだけど)しっかりと眼を閉じて眠っていることが、「わかりやすい」、のだけど、しかし、もちろん「オフィーリア」もそうなのだけど、死んでいる人間や、その死の世界に属する人間の視線は非常に曖昧で、でも「聖ステパノ」の、死んでいるステパノの眼は硬く閉じられているが、その代わり、とは言いすぎだけど、その背後にある暗闇に、姿を溶け込ませた、解説によるとステパノの遺体を埋葬する信徒らしいがどう見ても不吉な存在にしか見えない、人物(かどうかもわからない)人たちも、挙げられる。視線の強さ=生命力?(決して見ている/見ていないではない…)あとは、タイトルの文学趣味が気になった。

で、ホラーとは何か、と考えた時、それがすべてのホラーを内包するとは思わないし、1つの要素として考えたいのだけど、次に何が来るかわからない、というある種の唐突さ、というものがあるんじゃないかと思った。ティム・シルバーのビデオ・インスタレーション「Untitled(shooting tadpoles at the moon)」で、スライドショーのように3つの画面に連続して映し出される画像の中に、ホラー的なもの、はっきりいってしまえば、『呪怨』や『リング』を連想させるようなものが混ざっていて(写真が映る画像があるんだけど、その写真に映し出された人物の顔が溶けてしまっていている。いわゆる呪いに(見)定められた人物になってしまっている)、またそれとは違うけど、人物がある方向を見ながら記号的にいわゆる「驚愕」している画像もあり、そうしたものを見ているうちに、どうしても日本の恐怖映画を思い出さずにはいられなかったのだけど(もう1つ、ゲイっぽい要素もあったような気がする)、しかし、映像の唐突さ、というのは、流れの中でその効果を発揮するものであって、『モーテル・クロニクルズ』を読み始めたのだけど、なんというか、ホラーだなぁ、と感じていて、ここにはまさに、こういった形式の散文である以上続くしかない=連続するしかないという性質と、まるでそれを断ち切るかのように起こる唐突な出来事、が描かれていて、連続性と唐突さ、というのが、自分がホラーと感じる要素の1つなんじゃないかと思い、もう一回ビデオ・インスタレーションについて考えてみると、これは、スライド形式になっていることによって連続性を持たないものでありつつも、連続の中でこそ効果を発揮する(唐突さとしての)ホラー、を題材にしているところが面白いと思った…