三池崇史藁の楯 わらのたて』見た。

ともかく顔、顔のアップ、それも頭は切られて表情に寄るアップの連続。の中で際立つ、古ぼけた民家の庭先にたたずみ、曇り空の下、前髪を少し動かすくらいの不穏なそよ風、を浴びる清丸の上半身のショットの清涼感…しかし彼はこの時、嫌悪感を催すくらい自分勝手な理屈で最後の「いたずら」への欲望に身を震わせている。この、まったく画にならない(日本中どこにでもあるような)住宅街の一角に、なんとか、映画、を発生させようと、カメラを屋根上に配置して強引に画を作り出したり、薄暗がりの中吹く風を起こし捉えたりする。撮影は、三池監督と組む頻度の高い北信康で、『悪の教典』同様、――前作とは違い、夜、という時間的に「有利」な要素はほぼ使わず――、不吉さを刻む映像を表現している。清丸が、白岩の注意をそらすために、指差す路地、の、全貌の見えにくさ。ここは、ごちゃごちゃと、家や並木、植木、駐車場に置かれた車が入り組んでいる、という、これまた、映画に不向きなはずの風景(そして日本ではよくある)が使用されている、というのもある。
色も、艶のある黒っぽさ、それは、例えば、顔面の油、泥汚れ、時間のたった血液、をが目立つようになっていて――新幹線の中で向かい合う永山絢斗と大沢TKOの、充血した眼の交感(これはよかった)、や、最期まで天地逆のままの神箸の死、新神戸駅ホームで射殺される男の歪んだ髭面の顔――それに対して、それが良いとか悪いとか、ではなく、終盤の、清丸に激昂をぶつける銘苅、のシーンの色のコントラストの強さが、まるで北野映画のようで、前後から明らかに浮いている、という。血と、唐辛子(なのか、…)の赤が強調される。
キャスティング、でまず言及したいのは、小沢和義、本宮泰風、高橋和也長江健次、という、猛烈なVシネ感。しかも前者二人は九州やくざ、というのだからたまらない、というか…(唯一の銃撃戦はやくざVS警察IN新幹線!)。おまけに永山くんは、刑事というよりとっぽいチンピラ風だし、岸谷五朗、伊武さん、悪いと見せかけて「良い方の」本田博太郎、というセレクションにも主張が感じられてよい。
藤原竜也は、この手の役はお手の物、という感じか。松嶋さんも、がんばっていましたよ(てか不注意すぎかと)。冒頭の、射撃訓練のシーン、のわけのわからないワンショット(からのタイトル)がちょっと怖かった…(言い過ぎ)。
大沢TKOは、またしても、正常、真っ当さが過剰になりすぎて、実は一番狂っている、という役。もはやそういう人感。そして、余貴美子の、なんかやりそうで普通のいい人、という肩すかし。
…いや、そうではなくて、余貴美子にしろTKOにしろ、自分の仕事、プロに徹することのできる人、である、ということだろう。
ジャッキー・コーガン』『コズモポリス』見ないとな…。
ichida『漫画 日本霊異記』買った。イチダさんのイケメンっぷりにびびった。